2008 Fiscal Year Annual Research Report
元素選択電子分光による室温「高スピン偏極」合金のスピン電子状態解明
Project/Area Number |
20760441
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
恒川 雅典 Nagoya University, 物質科学国際研究センター, 研究員 (20403131)
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Keywords | 金属物性 / 磁性 / スピンエレクトロニクス |
Research Abstract |
ホイスラー化合物(X2YZ)においては、その磁気的性質が長年注目されてきた。近年、熱電材料、ハーフメタル材料、形状記憶合金のような多様な機能物質の合成に成功しているため、より注目されるようになり、実用材料候補としてコバルト基化合物等の混晶の研究が広く国際的に精力的に行われている。しかしながら、早期の電子状態の実験的検証が待たれているにもかかわらず、詳細な電子状態についての実験的な検証は殆ど報告されていない。詳細な電子状態を直接的に測定できる有力な実験手法といえば光電子分光(PES)である。近年の飛躍的な測定技術向上によって、特に高温超伝導体では今やPESは中心的な研究手法となっている。このPESを機能磁性材料の電子状態解明に応用することで、理論的な予測を実験により直接的に検証することを本研究の目的とする。 放射光施設で行う元素選択電子分光測定用の試料の清浄方法を試験した。試料自体は比較的硬いことが判明したが、独自の手法を応用すれば超高真空中での試料清浄も問題なく実施できることが確かめられた。同程度の硬さを示す関連物質についても超高真空中で同様の清浄方法を試験し、放射光を利用したPESも実施して価電子帯電子構造を調べた。別途、コヒーレントポテンシャル法を利用した局所密度近似に基づくバンド計算実行の為の計算機環境を構築した。このバンド計算結果を電子分光の測定結果と比較することで、「理論計算による電子状態の予測についての妥当性」を検証できる。当該の物質や関連物質について元素・軌道別に部分状態密度の計算を実施し、元素選択電子分光によって得られるスペクトル関数の予測を行った。関連物質に関するバンド計算の結果はPESの結果を定性的に十分説明できるものであった。
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