2009 Fiscal Year Annual Research Report
バルク金属ガラスにおけるナノスケール構造変化の直接観察
Project/Area Number |
20760442
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
平田 秋彦 Tohoku University, 原子分子材料科学高等研究機構, 助教 (90350488)
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Keywords | 金属ガラス / ナノ構造 / 透過電子顕微鏡 / ナノ結晶化 / ガラス安定性 |
Research Abstract |
本年度は、Fe系金属ガラスの中でも特に高いガラス形成能を有するFeCrMoCBTm合金系に関して、昇温過程でのナノスケール構造変化の観察を行った。観察は主に制限視野電子回折及びナノビーム電子回折法を用いて行った。FeCrMoCBTmの昇温過程での構造変化はナノスケールで起こる複雑な過程であり、通常のX線回折法などで明らかにすることは不可能である。本研究ではナノビーム電子回折で局所領域からの構造情報を数多くの領域から取ることで統計的な処理を行い、試料全体の局所構造の特徴を得た。具体的には、構造変化はガラス→α-Mn型準結晶→α-Mn型結晶→Cr23C6型結晶の順に起こり、電子回折中の回折斑点の位置は、ガラス構造から徐々にシフトしていく様子が観察された。ここで、Fe系金属ガラスにおいて進結晶構造が見出されたのは初めてのことであり、このことは、Zr系金属ガラスと同様、高ガラス形成能と準結晶形成の相関があることを示唆している。得られた結果より、本合金のような高いガラス形成能を持つ合金では、ガラス構造は類似の構造を経ながら徐々に変化していくことが明らかとなった。つまり、ガラス中の局所構造(中範囲規則構造)が最終構造(この場合準安定Cr23C6型結晶相)のいわゆる結晶核となることが困難であることを示している。これはFeNbB等の低いガラス形成能を持つ合金の挙動とは異なり、結晶化過程の特徴からガラス形成能を理解することが可能であると考えられる。
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