2009 Fiscal Year Annual Research Report
ペロブスカイト型高温プロトン導電体における欠陥構造およびイオン輸送現象
Project/Area Number |
20760446
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
八代 圭司 Tohoku University, 多元物質科学研究所, 講師 (20323107)
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Keywords | プロトン導電体 / 中温形燃料電池 / ペロブスカイト型酸化物 / 拡散係数 / イオン導電率 |
Research Abstract |
ペロブスカイト型高温プロトン導電体では、プロトン、酸化物イオン、ポールなどの部分導電率が温度・雰囲気ガス分圧により大きく変化し、主要キャリアが変動する。輸率はプロトン導電体デバイスの性能を大きく左右する特性であり、早期のデータ整備が望まれる。本研究では、酸化物イオン輸率とプロトン輸率を正確に分離して評価することを目的とする。平成21年度は主に同位体拡散係数を用いてペロブスカイト型プロトン導電体のイオン輸送メカニズムを明らかにすることを目指した. Sr(Zr,Y)O_3、Ba(Ce,Y)O_3の2種の代表的なペロブスカイト型高温プロトン導電体において、水素-水蒸気雰囲気下で導電率緩和過程を解析することで、化学拡散係数を求め、これらが水素分圧、水蒸気分圧にほとんど依存しないことを確認した。化学拡散係数は、輸率およびキャリアの自己拡散係数の関数として表せることから、キャリア濃度、プロトンの自己拡散係数、および酸素空孔拡散係数を利用して温度依存性の再現を試みたところ、推算値と実測値が良く一致した。ジルコネート系とセレイト系酸化物では、化学拡散係数が低温域で2桁ほど違ったが、プロトン自己拡散係数にはこれほど大きな違いはなく、低温で酸素空孔拡散係数が大きく異なることが原因であることが判明した。これらの結果は、中温域で高いプロトン導電性を達成するための以下のような指針を与える。高いプロトン導電率を持つためにはプロトン拡散係数を増加させることが必須だが、併せて酸素空孔拡散係数の増加が伴わないと、非常に遅いキャリア生成反応が、デバイスとして十分な性能を発揮する際のネックとなる。ただし、この際に酸素空孔拡散係数はプロトン自己拡散係数に対し十分に小さい必要がある。
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