2008 Fiscal Year Annual Research Report
鋳造→圧延→熱処理工程のみで創製する600MPa級の高強度マグネシウム合金板材
Project/Area Number |
20760463
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
糸井 貴臣 Chiba University, 大学院・工学研究科, 助教 (50333670)
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Keywords | マグネシウム合金 / 長周期構造 / 機械的特性 / 組織観察 / 圧延加工 |
Research Abstract |
Mg-TM(TM=Ni,Cu)-Y合金に生成する長周期相を強化因子として、高強度を有するMg合金板の作製を試みた。まず、Mg濃度が80%以上の組成域でMg-TM-Y鋳造合金を作製し、組織と機械的特性を調べた。組織観察を行った結果、TM:Yの組成比が1:2において、Mg相と強化因子となる長周期相の2相合金となることが明らかとなった。作製した鋳造材において降伏強度はTMとY元素が増加するに従い、増加する傾向があるが、伸び値は減少した。Mg_<90.5>Cu_<3.25>Y_<6.25>(at.%)鋳造合金では、長周期相とMg相の割合がおよそ6:4であった。室温にて引張試験(試験片形状はJIS14B)を行った結果、降伏強度は251MPaを示し、伸び値は5%を示した。 TMをNiとした場合でも、200MPaを超える高い降伏強度と6%の伸び値を示し、いずれの組成においてもMg_<90.5>Cu_<3.25>Y_<6.25>(at.%)が高い降伏強度と適度な伸び値を示した。それ以上TMやY量を増加させると、伸び値が小さくなるため、この組成を有する鋳造合金を板材作製の組成とした。大気中、623Kで1パス3%の圧下率にて、最終圧下率70~85%までの圧延を行い、板材(1.0×20×100mm)を作製した。作製したMg_<90.5>Cu_<3.25>Y_<6.25>(at.%)合金板材(70%圧延)を673Kで6hの熱処理後に引張試験を行った結果、室温で448MPaの降伏強度、512MPaの引張強度および6%の伸び値を示した。またこの合金板は、573Kでも228MPaの高い降伏強度を示し、室温から高温度域まで高い降伏強度を維持する事がわかった。また、Mg_<90.5>Cu_<3.25>Y_<6.25>(at.%)合金板材(85%圧延)では、723Kで10hの熱処理後に引張試験を行ったところ、室温で470MPaの降伏強度、551MPaの引張強度および8%の伸び値を示した。比強度は224MPa/(Mg・m^<-3>)であり、チタン合金(Ti6Al4V)の250MPa/(Mg・m^<-3>)に匹敵する事が明らかになった。熱間圧延により、強化因子となる長周期相の底面が板面に強く配向し、高温でもこの配向が安定である事、またこの長周期相には多数のキンク変形帯が観察されている事から、キンク界面ですべり変形が抑制される事、がこのような高い降伏強度を示した理由であると考えられる。
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