2009 Fiscal Year Annual Research Report
コバルト-酸素1次元鎖をオリジンとする高性能熱電材料の創出
Project/Area Number |
20760465
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
岩崎 航太 Nagoya University, 大学院・工学研究科, 助教 (90359753)
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Keywords | 熱電 / 酸化物 / コバルト / 単結晶 / 結晶育成 |
Research Abstract |
Ba_3Co_2O_6(CO_3)_<0.7>単結晶においてc軸方向で9.0×10^<-4>Wm^<-1>K^<-2>程度の酸化物として比較的高い出力因子を示し、有望な熱電材料として期待できることを明らかにした。Ba_3Co_2O_6(CO_3)_<0.7>はCoO_6八面体が面共有でc軸方向に配列した一次元柱を有する化合物である。 一般的な熱電素子において、材料は多結晶体として用いられることから、本研究ではBa_3Co_2O_6(CO_3)_<0.7>多結晶体の出力因子を評価した。結果としては、電気伝導率、ゼーベック係数とも単結晶と比較して低下し、出力因子も一桁程度小さな値となった。これは、多結晶化によりab面方向の輸送特性の影響を受けたためであり、高い性能を有する多結晶試料を得るためにはc軸方向へ配向した試料の作製が必要であることが示された。 また、本研究では、CoO_6多面体一次元柱を有するBa_<12>Co_<11>O_<33-δ>単結晶を育成し、その電気的性質を評価した。Ba_<12>Co_<11>O_<33-δ>のCo-O柱方向の電気伝導率は300-1100Kの温度域で半導体的な値を示した(0.3-280Scm^<-1>)。これは、類似の結晶構造を有するBa_3Co_2O_6(CO_3)_<0.7>の金属的な電気伝導と対照的な結果である。Ba_3Co_2O_6(CO_3)_<0.7>における一次元柱はCoO_6八面体のみから構成されるのに対し、Ba_<12>Co_<11>O_<33-δ>の一次元柱はCoO_6三角プリズムを有しており、CoO_6三角プリズムにおける比較的長いCo-O結合によってキャリアの伝導経路であるCo3d-O2pバンドの幅が狭くなったことが半導体的挙動の一因と考えられる。 本研究の結果から、高い電気伝導性発現のためにはCoO_6八面体柱の存在が大きなポイントとなることが明らかとなり、この指針はさらなる高性能材料探索に繋がるものと期待される。
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