2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20760470
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
伊藤 恵司 Kyoto University, 原子炉実験所, 助教 (80324713)
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Keywords | 中性子回折 / X線回折 / 非晶質 / 原子構造 / 水素 |
Research Abstract |
結晶・非晶質を問わず、水素吸蔵合金の構造研究は多数行われてきた。しかし、これまでの研究では水素原子の存在位置の解明に焦点が絞られており、水素吸蔵による金属原子分布の変化については研究例がほとんど無いといえる。特に、Ni-Zrなどの非晶質合金においては、水素吸蔵にともなう微粉化が起きにくいことが知られている。微粉化が起きにくい理由を明らかにするためには、水素吸蔵前後の非晶質構造を比較する必要がある。一方、結晶においては、水素吸蔵による格子膨張と微粉化は深く関係しており、水素吸蔵による局所的な格子膨張に関する知見を得ることが重要である。本研究では、NiZr非晶質合金およびにα-VDx結晶ついて、中性子、X線回折およびリバースモンテカルロ計算を行い、水素吸蔵による金属原子構造の変化を調べた。NiZr非晶質合金については、水素吸蔵により、Zr-Zr距離はわずかに増加するが、Ni-NiおよびNi-Zr距離はほとんど変化しないことが明らかになった。さらに、ボロノイ多面体解析の結果から、NiおよびZrの配位環境は水素を吸蔵してもほとんど変化しないことが明らかになった。また、α-VDx結晶については、中性子回折実験により得られた2体分布関数から、バナジウムと重水素間の再隣接距離は水素量が変化してもほとんど変わらないことが明らかになった。一方、水素量の増加に伴い、X線回折実験により得られた2体分布関数のピーク形状に変化が見られた。すなわち、第一配位圏に相当するピークの高距離領域の強度が増加した。この結果は、水素が格子間に侵入することにより、格子が局所的に膨張していることを示している。
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