2009 Fiscal Year Annual Research Report
変形誘起ω相変態を利用したβ-Ti合金の脆化現象の解明、力学特性改善
Project/Area Number |
20760471
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
萩原 幸司 Osaka University, 工学研究科, 助教 (10346182)
|
Keywords | ω相 / β-Ti合金 / 疲労軟化 / 塑性異方性 / 単結晶 / 相安定性 / 力学特性 / 応力誘起 |
Research Abstract |
昨年度制御法の確立に成功した、交番変形誘起単一バリアントω相の力学特性を明らかにすべく、交番変形を与えたTi-35Nb-10Ta-5Zr単結晶試料中より、微小圧縮試験片を切り出し、その塑性挙動の方位依存性を評価した。荷重軸として、交番試験と同一の[-149]、それから約90度回転した[1-94]の2方位を選択し、両者の挙動の差異を評価した。β-Ti結晶はbcc構造、すなわちabc軸の等価な立法晶系に属するため、両方位は結晶学的には同一である。しかし前者では単一ω相のc軸とBurgers vector (BV)の平行な(-101)[111]、一方後者では、c軸とBVが交差する(-110)[11-1]すべりがそれぞれ単一すべりとして活動する。疲労軟化前の50サイクル後疲労試験片から切り出した圧縮試験片において、その降伏応力は無変形材とほぼ同程度であり、両方位間での応力差もほとんど見られなかった。しかし一方、疲労破断後の試料中においては、両者は大きな差異を示し、[-149]方位では疲労軟化に対応する顕著な応力低下が見られるのに対し、[1-94]方位では、疲労軟化が全く認められない、もしくはその軟化の程度が相対的にかなり小さい値を示した。この結果はまさに、単一バリアントω相を含む試料の強度が、転位の運動方向とω相との結晶方位との相関により支配されていることを示している。すなわち、ω相のc軸と平行なBVを持つ転位は、ω相からほとんど運動抵抗を受けない、むしろその存在により軟化傾向を示すのに対し、ω相c軸と交差するようなBVを持つ転位は、ω相より強い変形抵抗を受けることが示唆された。実際に、変形後試料の光学顕微鏡観察において、疲労変形導入材(ω相形成材)では、無変形材と比較したすべり線の局在的な導入が顕著に認められ、またTEM観察においても、特定のω相バンドに沿った転位の高密度集積が観察された。 以上のような研究成果より、ω相含有β-Ti合金が示す局所変形傾向、これに付随する脆性挙動は、転位運動に対しω相が示す抵抗の強い異方性に由来することが強く示唆された。
|