2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20760473
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Research Institution | Kyushu Institute of Technology |
Principal Investigator |
横山 賢一 Kyushu Institute of Technology, 工学研究院, 准教授 (80308262)
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Keywords | 水素脆性 / 相変態 / 金属物性 / 生体材料 / 環境材料 |
Research Abstract |
本年度は、主にニッケルーチタン超弾性合金の水素脆性に及ぼす応力誘起マルテンサイト変態の役割について研究を行い以下の知見を得た。引張試験機を用いて応力誘起マルテンサイト変態と逆変態を交互に繰返しながら、カソード電解チャージ法により水素を添加し、水素吸収量や昇温水素放出挙動を調べた結果、母相とマルテンサイト相を交互に繰り返す動的な相変態下で水素添加すると、マルテンサイト相そのものに水素添加するよりも、水素吸収が著しく促進することが明らかになった。本合金は相変態を繰り返す環境下で使用されることがほとんどであるため、従来の静的な負荷下における評価だけでは不十分であることを意味している。昇温水素放出分析から、相変態に密接に関与する水素は低温域で昇温放出される水素であることが特定された。この水素は室温でしばらく放置することで試料内外へ拡散する性質をもっている。本研究で特筆すべきは、相変態はほぼ可逆的な過程であるが、水素と相変態の相互作用は不可逆な過程であることが示唆されたことである。マルテンサイト変態に伴って新たに生成する転位に水素が強くトラップされたため、逆変態で水素が元の存在状態に戻れなかったためと考えられる。またこのことは、マルテンサイト変態に及ぼす水素の影響は変態応力の低下となって現れることに対して、逆変態に及ぼす水素の影響はほとんど見られないことからも支持される。したがって、相変態させながら水素添加した場合、水素吸収が促進され試料表面の水素濃度が極めて高いにもかかわらずマルテンサイト変態に関連して破断しないのは、一回の変態に関与する水素が少ないためと考えられる。
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