2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20760473
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Research Institution | Kyushu Institute of Technology |
Principal Investigator |
横山 賢一 Kyushu Institute of Technology, 工学研究院, 准教授 (80308262)
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Keywords | 水素脆性 / 相変態 / 金属物性 / 生体材料 / 環境材料 |
Research Abstract |
本年度は、ニッケル-チタン超弾性合金と比較対象材料として応力誘起変態しない純チタンやアルファ+ベータ型チタン合金の水素脆性について研究を行い以下の知見を得た。ニッケル-チタン超弾性合金を塩化ナトリウム水溶液とフッ化ナトリウム水溶液中とで陰極電解水素チャージした場合を比較すると、水素吸収量が同じであっても昇温水素放出挙動は必ずしも一致しなかった。さらに、合金の表面改質の手法として用いられる塩酸や硫酸溶液に自然浸漬した場合と比較すると昇温水素放出挙動は大きく異なった。これはニッケル-チタン超弾性合金中の水素の存在状態は、水素濃度が同じであっても水素チャージ条件によって変化し、応力誘起マルテンサイト変態挙動に影響を与えることを示唆している。過酸化水素含有フッ化ナトリウム水溶液中では、水素発生反応よりも過酸化水素の還元反応が支配的となり、ニッケル-チタン超弾性合金の水素吸収が抑制されることが明らかになった。しかしながら、水素吸収が抑制されるにもかかわらずマルテンサイト変態応力以上の負荷応力下では腐食に関連して破断した。この場合、水素吸収抑制に伴って破壊機構が変化したことと、過酸化水素濃度によっては破断時間が長くなったことも注目すべきである。この現象については、今後詳細に調べる必要があると考えられる。水素チャージ条件が昇温水素放出挙動に及ぼす影響は相変態を有しない純チタンでも確認されたが、アルファ+ベータ型チタン合金ではほとんど確認されなかった。水素チャージ条件が与える水素存在状態への影響は合金により差があると考えられるが、前年度の知見も踏まえると動的なマルテンサイト変態は水素の存在状態に強く関与することが示唆される。
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