2009 Fiscal Year Annual Research Report
分子軌道―分子力学―粗視化粒子接続法を用いたステンレス鋼の応力腐食割れ解析
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20760480
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
五十嵐 誉廣 Japan Atomic Energy Agency, 原子力基礎工学研究部門, 研究職 (70414555)
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Keywords | 応力腐食割れ / シミュレーション / 分子軌道法 / ハイブリッド法 |
Research Abstract |
本研究の目的は、計算機シミュレーションを用いてステンレス鋼の応力腐食割れ解析を行うことである。まず、昨年度開発した拡張半経験分子軌道法の適用性評価のため、多原子系への本手法の適用を行った。その結果、シリカグラス系では150,000原子以上、本研究のターゲットである鉄系では10,000原子以上の系に対し量子化学的解析が可能であることを確認した。次に、鉄+クロム2元合金ランダム粒界系に対し本手法を適用し、エネルギー解析を行った。解析した系は、鉄4,386個、クロム962個からなり、鉄単体ランダム粒界系の一部の原子をクロム原子に置き換えることで作成した。しかし、量子解析に用いているソフトウェアMOPACでは鉄-クロム間のクーロン反発エネルギーが正しく得られないことから、本研究では結合に関与するエネルギーの議論として、Hartree-Fock近似での全エネルギーのうち、クーロン反発エネルギーを含まない、共鳴積分に関するエネルギー項を考慮することにした。基準となる体心立方構造の鉄、鉄-クロム系の共鳴積分エネルギー項からの差を見ることで、平衡状態からの量子論的な結合エネルギーの変化を確認することが可能となる。このエネルギーのずれを共鳴積分エネルギー差と呼ぶ。解析の結果、ランダム粒界近傍で共鳴積分エネルギー差が大きくなっていることがわかった。この値が大きいということは量子的に不安定であり、粒界近傍で化学的に活性である可能性があることを示している。しかし、ランダム粒界近傍と共鳴積分エネルギー差の増大との因果関係を明確にすることは出来なかった。
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Research Products
(2 results)