2009 Fiscal Year Annual Research Report
表面損傷を与えた低放射化フェライト鋼の水素同位体リテンション
Project/Area Number |
20760575
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
山内 有二 Hokkaido University, 大学院・工学研究科, 准教授 (80312388)
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Keywords | 核融合炉 / プラズマ対向材料 / 水素同位体挙動 / 低放射化材料 / フェライト鋼 / 表面損傷 |
Research Abstract |
低放射化フェライト鋼は、中性子照射耐性等に優れているため、核融合炉内のプラズマ対向壁や核融合炉構造材料の候補となっている。プラズマ対向壁は燃料である重水素・三重水素だけではなく、核融合反応の結果生成される中性子やヘリウムの粒子負荷を受けるため、表面に損傷が生じる。また、その後の熱負荷などにより、表面に損傷を受けた層の微細構造が変化する。一方、金属材料中の水素同位体リテンションは表面微細構造によって大きく変化することが報告されている。従って、従来から調べられてきている低放射化フェライト鋼の水素同位体リテンション特性やその脱離挙動が大きく変化する可能性がある。 本研究では予め導入した表面損傷により、低放射化フェライト鋼の水素同位体リテンション特性や脱離挙動がどのように変化するのか系統的な評価を行う。 今年度は、低エネルギー水素イオンを照射し導入した表面損傷と重水素リテンション特性との関係について、表面形態観察及び組成分析などにより調べた。 予め低エネルギーの水素イオンを照射した試料の重水素脱離温度は、未照射のものに比べ低温側にシフトし、吸蔵量が最大20倍、増加した。水素イオンの照射温度を変えた場合、照射温度が室温から530Kまででは、重水素吸蔵量にほとんど変化が見られなかったが、770Kでは吸蔵量が大幅に減少した。ピーク温度も高温側にシフトした。また、走査型電子顕微鏡や原子間力顕微鏡による重水素イオン照射後試料の表面形態観察の結果、全試料でブリスターと思われる隆起物の形成が観測されたが、予め水素イオンを照射した試料のブリスター面密度が小さい傾向を示した。オージェ電子分光法による試料表面の組成を調べた結果、予め照射した試料最表面に酸素不純物層が見られた。照射後に形成された不純物層により、重水素吸蔵・脱離挙動が変化し、またブリスター形成過程も変化したと考えられる。
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