2010 Fiscal Year Annual Research Report
表面損傷を与えた低放射化フェライト鋼の水素同位体リテンション
Project/Area Number |
20760575
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
山内 有二 北海道大学, 大学院・工学研究院, 准教授 (80312388)
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Keywords | 核融合炉 / プラズマ対向材料 / 水素同位体挙動 / 低放射化材料 / フェライト鋼 / 表面損傷 |
Research Abstract |
低放射化フェライト鋼は、中性子照射耐性等に優れているため、核融合炉内のプラズマ対向壁や核融合炉構造材料の候補となっている。プラズマ対向壁は燃料である重水素・三重水素だけではなく、核融合反応の結果生成される中性子やヘリウムの粒子負荷を受けるため、表面に損傷が生じる。また、その後の熱負荷などにより、表面に損傷を受けた層の微細構造が変化する。一方、金属材料中の水素同位体リテンション(保持)は表面微細構造によって大きく変化することが報告されている。従って、従来から調べられてきている低放射化フェライト鋼の水素同位体保持特性やその脱離挙動が大きく変化する可能性がある。 本研究では予め導入した表面損傷により、低放射化フェライト鋼の水素同位体保持特性や脱離挙動がどのように変化するのか系統的な評価を行う。 今年度は、低エネルギーのヘリウムプラズマを照射(予照射)し導入した表面損傷と重水素保持特性との関係について調べた。 当該試料に打ち込まれた重水素は昇温脱離分析中HD,D_2,HDOの形で脱離し、特にHDOの脱離量が多くなった。HDOの脱離ピーク温度は450-700Kであり、ヘリウム予照射により低温側で脱離する量が増大した。低照射量領域では、予照射により重水素脱離量と保持量が一旦減少したが、高照射量まで照射した場合、ともに増加した。予照射による表面炭素除去による保持量の低下と、表面損傷や不純物(酸素)層の導入による増加が起こったことが分かった。また、脱離種割合の変化を調べた結果、予照射によりHDの脱離割合が減少した。表面層に含まれていた軽水素がヘリウム予照射により脱離したためと考えられる。 本研究により、ヘリウムプラズマ照射等により導入された表面損傷層、不純物分布変化などの表面改質により、当該フェライト鋼の重水素脱離挙動及びリテンション特性が大きく変化することが分かった。
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