2009 Fiscal Year Annual Research Report
陽電子マイクロビームを用いた応力腐食割れの超微視的解析
Project/Area Number |
20760598
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
前川 雅樹 Japan Atomic Energy Agency, 先端基礎研究センター, 研究員 (10354945)
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Keywords | 陽電子マイクロビーム / 陽電子消滅法 / 空孔型欠陥 / 応力腐食割れ / ステンレス鋼 / 亀裂進展 / 耐食性 / 熱鋭敏化 |
Research Abstract |
原子力材料分野では、炉の健全性に影響を与えるステンレス鋼の応力腐食割れ(SCC)に関する研究が精力的に行われている。特に亀裂最先端部における劣化解析が重要と考えられている。我々は陽電子マイクロビームを用い、SCC亀裂の先端部付近に単空孔程度の大きさの空孔型欠陥が存在することを明らかにしてきた。材料の耐食性(熱鋭敏化度)低下により亀裂進展が促進された試料ほど空孔の分布は明瞭であるなど、亀裂の進展には空孔型欠陥が関与していると思われるが、亀裂の進展と空孔との関連をより明確に調べるには、従来のようにあらかじめ亀裂を発生させた試料を破壊的に整形して断面観察をするのでは不十分である。そのため、亀裂の進展過程を保持したまま、亀裂の進展中における空孔分布観察を行う必要がある。そこで、応力印加下に試料を固定し、腐食を進展させながら断続的に亀裂進展の様子を観察できる測定法を開発した。薄膜ステンレス試料に引っ張り応力を印加し、塩化マグネシウム沸騰水腐食環境下でSCCを誘発させ、発生した亀裂先端付近の領域に対し陽電子マイクロビームを適用し、ドップラー幅広がり測定から空孔分布観察を行い、亀裂進展に伴う空孔型欠陥の発生状況を調べた。その結果、腐食前の応力印加状態と比べて、腐食後に発生した亀裂先端近傍では空孔濃度が上昇すること観測された。これはSCCによってはじめて空孔型欠陥が導入されたことを示している。さらに腐食環境に暴露し亀裂を進展させていくと、空孔濃度の上昇部位に沿って亀裂が進展していくような結果が得られた。また導入された空孔は試料に印加されている応力を除去しても残存することが分かった。以上よりSCC亀裂進展に伴い先端部付近に生じた塑性変形による応力誘起孔型欠陥が亀裂進展を先行していることが示唆される。
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