2008 Fiscal Year Annual Research Report
セイヨウオオマルハナバチ侵入イベントを利用した送粉生態系ネットワークの解明
Project/Area Number |
20770013
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
石井 博 University of Toyama, 理工学研究部(理学), 講師 (90463885)
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Keywords | セイヨウオオマルハナバチ / 送粉相互作用網 / 盗蜜 / 北海道 / 受粉 / 外来種 |
Research Abstract |
セイヨウオオマルハナバチの侵入がどの範囲に及ぶのか、またセイヨウオオマルハナバチの侵入が起きた地域において、植物相とポリネーター相の多対多の種間相互作用によって築かれている複雑な関係がどのように影響を受けるのかを調べるため、北海道上川地方の、様々な地形要素を含めて、セイヨウオオマルハナバチを含むマルハナバチ各種が利用している植物を調査し、それを過去数年のデータと比較した。その結果、セイヨウオオマルハナバチが、森林域には侵入していかないであろうことが確認されたが、同時にセイヨウオオマルハナバチの広食性も改めて示された。これは即ち、セイヨウオオマルハナバチが侵入した地域においては送粉相互作用網への撹乱が大きくなることを予想する。事実、セイヨウオオマルハナバチが侵入した地域においては、多くのマルハナバチ媒の植物が、優占的にセイヨウオオマルハナバチに利用されていた。特筆すべきは、地域の代表的な長舌マルハナバチであるエゾナガマルハナバチ個体群が衰退することが示唆されたことである。短舌マルハナバチであるセイヨウオオマルハナバチは、減ってしまったエゾナガマルハナバチがこれまで受粉していた植物の受粉を完全には肩代わりできないと指摘されている。というのも、セイヨウオオマルハナバチは盗蜜癖(花の横に穴をあけて蜜を吸う行為で、受粉に寄与しないことがある)があるからである。このため、一部の植物の繁殖が負の影響を受ける可能性が改めて予想された。ただし、セイヨウオオマルハナバチの盗蜜行動に関しては、一日の中で時間と共に変化していく可能性も示唆された。この行動によってはセイヨウオオマルハナバチの負の影響は限定的に留まるかもしれない。この点に関しては次年度以降のさらないる調査が必要である。
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Research Products
(3 results)