2009 Fiscal Year Annual Research Report
セイヨウオオマルハナバチ侵入イベントを利用した送粉生態系ネットワークの解明
Project/Area Number |
20770013
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
石井 博 University of Toyama, 理工学研究部(理学), 講師 (90463885)
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Keywords | セイヨウオオマルハナバチ / 送粉相互作用網 / 盗蜜 / 北海道 / 受粉 / 外来種 |
Research Abstract |
前年度までの研究より、セイヨウオオマルハナバチの侵入により、長舌マルハナバチと短舌マルハナバチ間の、花資源を巡る相互作用が大きく影響を受けることが示されている。この相互作用の撹乱により、地域の植物の繁殖が影響を受けることが予想される。そこで本年度は、長舌マルハナバチと短舌マルハナバチ間の、花資源を巡る相互作用についてより詳しく調べた。 調査は、短舌マルハナバチによる花筒が長い花への盗蜜行動(花の横に穴をあけて蜜を吸う行為で、受粉に寄与しないことがある)の影響を評価するため、モデル植物集団として、花筒が長いアカツメクサの群集を採餌しているマルハナバチ群集を用いて行った。 その結果、長舌マルハナバチが多くいる集団では、花あたりの残存蜜量が低く抑えられており、短舌マルハナバチ(セイヨウオオマルハナバチのワーカー)の殆どが盗蜜をしていたが、長舌マルハナバチが少ない集団では、花あたりの残存蜜量が比較的多く、短舌マルハナバチの約半数は正統訪花していることが分かった。なお、後者の集団において正統訪花していたのは、セイヨウオオマルハナバチの働き蜂の中でもよりサイズが大きい個体、すなわち相対的に口吻の長い個体であった。同種同カーストのマルハナバチが、集団の状況や自身の個体サイズによって、採餌方法を決定していることが示されたのは、おそらく初めてである。 以上の結果は、花筒が長い花では一般的に盗蜜をするとみなされている短舌マルハナバチであるセイヨウオオマルハナバチのワーカーも、ポリネーターの群集組成の如何によっては正統訪花をし、ある程度植物の受粉に寄与している可能性を示している。セイヨウオオマルハナバチの侵入の影響をより正確に評価する上で、重要な知見が得られたと考えている。
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Research Products
(1 results)