2009 Fiscal Year Annual Research Report
雄の繁殖履歴に依存した雌の配偶者選択:コピー戦術の実証とその進化要因の解明
Project/Area Number |
20770016
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
竹垣 毅 Nagasaki University, 水産学部, 准教授 (50363479)
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Keywords | 配偶者選択 / 性淘汰 / 魚類 / 子の保護 / 繁殖生態 / コピー戦術 / 進化 / 行動生態 |
Research Abstract |
他個体の配偶者選択を観察して真似る「Mate-choice copying(コピー戦術)」は、魚類を含む多くの分類群で報告されているが、その進化要因は未だ不明である。本研究では、雄保護魚類のロウソクギンポを材料に、雌のコピー戦術を実証し、その進化要因を解明することを目的とした。これまでの調査で、本種雌が雄の配偶履歴に依存した配偶者選択を行うこと(Matsumoto et al., in prep)、複数の雌が、ペア産卵を行っている巣の周辺に集まり、その後、雄の求愛を受けることなく無理やり入巣して産卵したことから、本種雌のコピー戦術が示唆されていた。21年度は、これらの雌の配偶行動が、単に魅力的な雄との配偶行動ではなく、コピー戦術であることを実証するために、通常雌が選択しない「配偶履歴のない雄」とモデル雌とのペア産卵を雌(実験雌)に見せて、その後、その実験雌の配偶者選択を追跡する野外操作実験を行った。その結果、本来ならば雌から選ばれる可能性がほとんど無いその「配偶履歴のない雄」の巣に複数の雌が集まり、それらの雌が産卵に至った。この実験結果は、本種雌がコピー戦術を採用している可能性を強く示唆するが、複雑な野外実験故に現段階ではサンプル数が少ないため(N=6)、22年度も同様の実験を継続して仮説を検証する予定である。他魚種において、雌は日齢が若い卵を多く保護する雄を選択することで、捕食に対する「薄めの効果」が期待できることが知られているが、ロウソクギンポ雌は、巣内の卵の発生段階を識別できないことに加えて、産卵せずに出巣すると雄から激しく噛み付かれ傷付く「ハラスメント」を受けることから、雄あるいは巣の査定(Mate sampling)が困難である。それ故、安全かつ正確に雄を選択できるコピー戦術が進化したのかもしれない。
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