2008 Fiscal Year Annual Research Report
造礁サンゴの初期生活史における褐虫藻獲得・共生成立過程
Project/Area Number |
20770017
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
波利井 佐紀 University of the Ryukyus, 理工学研究科, COE研究員 (30334535)
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Keywords | 海洋生理生態 / 初期生活史 / 造礁サンゴ類 / 共生藻類 |
Research Abstract |
サンゴ礁に生息する造礁サンゴ類は単細胞の藻類「褐虫藻」と共生するが、初期生活史における褐虫藻獲得と共生系成立過程については不明な点が多い。本研究では、外部環境から褐虫藻を獲得する水平伝搬型サンゴの浮遊幼生および初期ポリプが、いつどのように褐虫藻を獲得し共生系を成立させるかを、長期野外調査と室内実験によって明らかにする。特に、褐虫藻は複数のクレードに分類され、どのタイプと共生するかにより環境耐性が異なることが報告されている。本研究では、幼生や初期ポリプがどの褐虫藻タイプと共生するのかを異なる環境下で調査し、成体と比較することによって、サンゴが初期生活史の段階から環境に応じた褐虫藻タイプを選択的に獲得し共生系を成立させるのかどうかを明らかにする。 本年度は、室内実験においてサンゴ数種の幼生に褐虫藻を与え、獲得の有無や時期、内部構造の関係を明らかにした。その結果、5属9種の幼生で褐虫藻獲得が確認され、そのうちミドリイシ属サンゴ(Acropora spp.)は受精後5, 6日目以降に獲得を開始すること、口部および胃腔の発達に伴い獲得数が増加することがわかった(Harii et al.2009)。これより多くの水平伝搬型サンゴは、浮遊期間中に褐虫藻を獲得する可能性があることが示唆された。 野外調査では、ミドリイシ属サンゴについて成体の褐虫藻クレード、および幼生と初期ポリプの褐虫藻獲得について調べた。その結果、成体は褐虫藻クレードCと共生すること、また、幼生は野外でも藻類を獲得し、その藻類は複数のクレードを含む褐虫藻であることがわかった。初期ポリプについては、異なる水深2カ所にポリプを設置し数ヶ月おきに採取して固定した。今後、得られた試料から褐虫藻クレードの特定を行う予定である。 Harii et al.(2009)Mar Biol 156 : 1203-1212
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Research Products
(4 results)