2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20770020
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Research Institution | National Institute for Environmental Studies |
Principal Investigator |
井上 智美 National Institute for Environmental Studies, アジア自然共生研究グループ, 研究員 (80435578)
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Keywords | マングローブ / 根 / 根圏酸化 / 物質循環 / 潮間帯 |
Research Abstract |
マングローブ植物の根が土壌微生物活動へ及ぼす影響について明らかにすることは,マングローブ植物の生育機構の解明や,生態系における役割の解明において重要である.当該年度は,マングローブ生態系を構成する主要な3種(オヒルギ,ヤエヤマヒルギ,ヒルギダマシ)について,根圏の窒素動態を明らかにする事を目的とした. 沖縄県石垣市川平,浦田原川河口域に形成するマングローブ林にて調査を行った.森林を構成する優先種3種は陸側から海側へ向けて地盤高が下がるにつれてオヒルギ,ヤエヤマヒルギ,ヒルギダマシの順に帯状分布を形成していた.各種の林内に調査サイトを設置し,各サイトの根圏区及び非根圏区で土壌と土壌間隙水を採取した.採取したサンプルについて,土壌の有機物含有量と土壌C/N,土壌間隙水中の硝酸態窒素濃度及びアンモニア態窒素濃度を分析した. 3種全ての根圏土壌において,非根圏区より高い有機物含有量と低いC/Nが認められた.根圏区では枯死根などの有機物供給量が多いと共に,微生物による窒系同化が起きていることが示唆される.また,有機物含有量とC/Nは全体的に冬季で高かった.調査サイトの冬季の土壌温度は夏季に比べて概ね100C低く,分解や窒素同化を伴う微生物活動が低下している可能性がある.この様な冬季の有機物蓄積は特に根圏区で顕著であり,根圏区の微生物相が非根圏区と異なることや冬季に枯死根などの有機物供給量が増加していることなどが推察される. 植物可吸態である土壌間隙水中の溶存全窒素濃度は,3種全てにおいて根圏区の方が非根圏区より高かった.形態別に見ると,アンモニア態窒素濃度は非根圏区の方が根圏区より高く,硝酸及び亜硝酸態窒素濃度は根圏区の方が高かった.今回調査した3種のマングローブ植物は根系に吸気のための通気組織が発達しており,根細胞内へ送られた酸素が根圏土壌へ漏れ出していることが知られているが,酸化的な根圏区でアンモニア態窒素が酸化される硝化作用が起きていることが推察される.
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