2010 Fiscal Year Annual Research Report
展葉の不均一性に着目した季節性熱帯常緑林における乾季蒸散量の時系列推定
Project/Area Number |
20770021
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Research Institution | Forestry and Forest Products Research Institute |
Principal Investigator |
伊藤 江利子 独立行政法人森林総合研究所, 北海道支所, 主任研究員 (20353584)
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Keywords | 生態学 / 自然現象観測・予測 |
Research Abstract |
本研究では季節性熱帯域に生育するカンボジア低地常緑林における展葉現象と蒸散速度の関係を解明し、乾季蒸散量を広域的かつ時系列的に推定することを目標としている。最終年度である当年度は成果の時空間的なスケールアップを目指した。個葉蒸散活性の時間変化と林分葉群動態を統合した乾季蒸散量変化モデルを構築し、衛星情報を用いた外挿手法を検討した。 カンボジア低地常緑林は大量の地下水が貯留・供給される厚い土層上に成立するため、乾季中でも水分条件に著しい制約が掛からない。個葉蒸散量は気象条件(飽差)と個葉蒸散活性(気孔コンダクタンスで指標)に依存すると考えられる。個葉蒸散活性は展葉後の成熟に伴って急速に高まったのち漸減した。 林分蒸散量は個葉蒸散量に加え、個葉存在量にも依存する。乾季中の個体葉量(直接観測)と林分葉量(葉面積指数を非破壊的光学手法で推定)は一定であった。個体蒸散量は個体内の葉齢構成を反映し、林分蒸散量は林分の葉齢構成を反映すると考えられる。 林分の葉齢構成の時系列変化を明らかにするため、落葉フェノロジーをリタートラップ法で推定した。フタバガキ科大径木が卓越する林分では展葉は乾季前半と後半に起こるが、フタバガキ科大径木を欠く林分では展葉は乾季後半に集中する。前者では乾季前半と後半に蒸散量が増加するが、後者では前半の増加を欠くと推測される。衛星NOAA画像解析(2001-2002年)では調査地であるカンボジア中央部にフタバガキ科大径木が広範に存在しており、乾季の前後半における蒸散増加が示唆された。 近年進行中のフタバガキ科大径木の消失による森林劣化が常緑林地域の乾季蒸散量に与える影響を推定するため、高解像度衛星ALOS解析(環境省環境総合B-072)で検出された大径木伐採エリアにおいて、伐採(2006-2007年乾季)前後の変化を高頻度・中解像度衛星MODIS画像を用い、時系列モデル化処理で得られるスペクトルの季節変化区分を利用して解析した。
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