2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20770023
|
Research Institution | The Graduate University for Advanced Studies |
Principal Investigator |
沓掛 展之 The Graduate University for Advanced Studies, 先導科学研究科, 助教 (20435647)
|
Keywords | 集団的意思決定 / ハダカデバネズミ / 真社会性 / 協力行動 / 社会行動 |
Research Abstract |
動物における集団的意思決定は、複数の選択肢からひとつの選択肢を選ぶ行動と定義される。集団的意思決定のもっとも有名な実証例は、ミツバチの8の字ダンスによる餌場に関する情報コミュニケーションや、引越し場所の決定である。近年の行動生態学において、集団的意思決定のメカニズムや、個体レベルのコスト・利益を研究することは、社会性の進化を考えるうえで、新たな視点を提供する研究テーマとして注目を集めている。しかし、複雑な社会性を有する動物における集団的意思決定の実証的研究例は少ないという問題点があった。そこで、本研究では、地下性齧歯目の一種である真社会性ハダカデバネズミHeterocephalus glaberを対象に、集団的意思決定のメカニズムを実験的に研究した。本種は、協力性の高い社会を形成し、ひとつの群れに繁殖するメス(女王)が一頭、繁殖オスが一頭〜二頭存在する。繁殖個体の仔は劣位個体となり、自らは繁殖しないワーカーとなる。また、ワーカー間にも、体のサイズに応じて、労働行動のレパートリー、その行動頻度が異なる。集団的意思決定に関連すると考えられる要因を操作した実験を行った結果、ハダカデバネズミにおける集団的意思決定には複数の社会的、生態学的要因が関係していることが分かった。本研究内容は、国際行動生態学会、日本進化学会において発表され、現在、国際学術誌に投稿するために準備をしている。今後は、実験データをもとに、集団的意思決定を形成する際の個体の行動メカニズム、コスト、社会交渉に関する分析を進め、理論的アプローチを含めた統合的理解を目指す。
|