2009 Fiscal Year Annual Research Report
植物細胞におけるオルガネラの流動とポジショニングの分子機構の解明
Project/Area Number |
20770032
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
上田 晴子 Kyoto University, 大学院・理学研究科, 研究員(産官学連携) (90402776)
|
Keywords | 植物生理 / オルガネラ |
Research Abstract |
植物の細胞内は非常にダイナミックな空間であり,原形質流動として知られるオルガネラ運動が観察される.原形質流動の駆動力はアクチン・ミオシン系であると考えられているが,具体的な分子の単離・同定はほとんど進んでいない.本研究では,「原形質流動において小胞体の流動が重要な役割を果たす」とのアイデアに基づいて小胞体流動に関与するミオシンの変異体解析を行い,下記の新規知見を得た. シロイヌナズナのミオシンXIは13種類のアイソフォームから構成されており,ミオシンXI-Kの欠損変異体において小胞体流動が抑制されていることを見いだした.この流動抑制は,恒常的に発現の高いミオシンであるMYA1およびMYA2との多重変異体でさらに顕著であることが明らかになった.これらの変異体では,小胞体流動の抑制に加えて小胞体の形態や分布に異常が観察された.興味深いことに,この異常はアクチン脱重合剤で処理した細胞の小胞体と酷似していた.そこで,これらの多重変異体におけるアクチン繊維束を野生型と比較した.野生型の子葉葉柄細胞では,アクチン繊維束が細胞の長軸方向に発達し,そのアクチン繊維束に沿って小胞体の活発な流動が観察された.一方,多重変異体の細胞では,アクチン繊維束の配向がランダムで長軸方向に沿っておらず,小胞体の分布とも相関がみられなかった.以上の結果から,ミオシンXIはアクチン依存的な小胞体の分布パターンを形成するだけでなく,細胞内におけるアクチン繊維束そのものの正常な配向に必要であることが示された.
|