2009 Fiscal Year Annual Research Report
発ガン予防グルコシノレート:その生合成と分解制御の分子機構
Project/Area Number |
20770044
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Research Institution | Fukui Prefectural University |
Principal Investigator |
丸山 明子 Fukui Prefectural University, 生物資源学部, 講師 (70342855)
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Keywords | 植物 / シグナル伝達 / 硫黄 / グルコシノレート / 機能未知遺伝子 |
Research Abstract |
アブラナ科植物に多く含まれる含硫二次代謝物グルコシノレート(GSL)は、病害虫に対する忌避物質として知られ、また、発ガン抑制効果を有する。近年、GSL生合成酵素群の単離、同定が相次ぎ、生合成経路の全体像が明らかになりつつあるが、植物体内におけるGSL代謝の制御については、ほとんど知見がない。SLIM1は、環境中の硫黄欠乏(-S)に応答して、硫黄同化及びGSL分解を正に、メチオニン由来GSL(mGSL)生合成を負に制御する転写因子である。申請者は、SLIM1の制御下にある遺伝子群を対象とした逆遺伝学的解析から、mGSL生合成の抑制因子Xを見出した。本研究では、植物体内のGSL代謝制御機構の解明を目指し、XによるmGSL生合成抑制機構の解析及び新規GSL分解酵素の単離・同定を行う。得られる知見は、病虫害抵抗性や発ガン抑制効果の高い農作物の作出へ向けた分子基盤となる。 1) XによるmGSL生合成抑制機構の解析…これまでに、Xの遺伝子欠損変異株ではmGSL量が増加すること、Xの過剰発現株ではmGSL量が減少する事を見出した。即ち、Xを用いる事により植物体内のmGSL量を任意に調節できる。しかし、Xは機能未知遺伝子であり、XによるmGSL生合成抑制の分子機構は不明である。平成21年度は、抑制因子X自体が転写抑制活性を持つ可能性を、一過的転写活性化実験により検討した。これまでのところ、Xによる転写抑制活性は認められておらず、来年度も引き続き解析を行う予定である。加えて、Xの標的遺伝子を明らかにする目的で、Xの遺伝子欠損変異株及び過剰発現株について、GeneChipを用いた遺伝子発現解析を行った。 2) GSL分解酵素の機能解析…SLIM1の制御下にある機能未同定のミロシナーゼ様遺伝子2種について、遺伝子破壊株、過剰発現株を取得した。硫黄十分/欠乏時の成育、GSL量、他の硫黄代謝物(硫酸イオン、チオール)量を解析したが、野生型株と比較して明確な違いは認められなかった。組織局在解析用のプロモーター-GFP植物を作製し、種子を得た。来年度に顕微鏡観察を行い、発現組織を明らかにする予定である。
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