2008 Fiscal Year Annual Research Report
細胞連結様式から解く二分裂型トレボキシア藻の糸状体化の過程
Project/Area Number |
20770049
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Research Institution | Senshu University |
Principal Investigator |
山本 真紀 Senshu University, 商学部, 准教授 (80361616)
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Keywords | 藻類 / トレボキシア藻 / 細胞分裂 / 細胞壁 / 電子顕微鏡 |
Research Abstract |
トレボキシア藻の多くは内生胞子形成で増殖する。これまでに、内生胞子形成時の娘細胞壁合成のタイミングには細胞質分裂の前に起こる初期合成型と後に起こる後期合成型があることを示したが、いずれの型も分裂のたびに母細胞壁が脱ぎ捨てられる。一方、二分裂するNannochloris bacillarisやStichococcus bacillaris、出芽するMarvania geminataやMarvania cocoidesなどもトレボキシア藻に含まれる。本研究では、内生胞子形成から二分裂・出芽への分裂様式の転換をきっかけにして、単細胞緑藻の細胞連結がどのように生じたかを明らかにすることを目指した。 S. bacilarisは、N. bacillarisと似た桿状の形態だが、細胞のサイズが約1.5倍大きい。蛍光顕微測光でS. bacillarisの核DNA含量を測定したところ、約80Mbであり、N. bacillaris (20.3Mb)の約4倍だった。18srRNAに基づく分子系統解析を行ったところ、S. bacillaris溜とN. bacillarisはトレボキシア藻綱内の別のクレードに属することが示された。しかし、どちらの種も二分裂で増え、内生胞子形成のような母細胞壁の脱ぎ捨ては観察されなかった。 S. bacillarisの分裂細胞をTEMとFE-SEMで観察すると、母細胞壁は細胞質分裂後に開裂するものの娘細胞壁に密着したままだった。これはN. bacillarisの観察結果と一致する。娘細胞壁新生の観点からは、二分裂型は内生胞子形成の後期合成型と本質的に相同な分裂様式であることがわかる。二分裂型は、母細胞壁が残存するという表現型を得て、トレボキシア藻綱内のそれぞれ別のクレードで独立に生じたと考えられる。 S. bacillarisはしばしば細胞同士が糸状に連結する。その頻度を観察すると、対数増殖期には数〜数十個の細胞が連結し、徐々に長く伸びるが、定常期に入ると散開し単細胞状態へと戻った。多細胞性のトレボキシア藻の種の出現はこのような糸状体形成の過程から始まったのかもしれない。
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