2009 Fiscal Year Annual Research Report
昆虫体表フェロモンの知覚機構と一酸化窒素シグナル系が及ぼす効果
Project/Area Number |
20770052
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
佐倉 緑 Hokkaido University, 電子科学研究所, 博士研究員 (60421989)
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Keywords | 昆虫 / フェロモン / 一酸化窒素 / 闘争行動 / 触角 / オクトパミン |
Research Abstract |
本研究ではコオロギを材料として、オス個体同士の闘争行動を引き起こす体表物質の情報処理機構を調べることを目的としている。昨年度までに、相手の体表物質の情報が闘争の開始に不可欠であることや、敗者の逃避行動発現に関与することが明らかとなった。また、攻撃行動の発現には一酸化窒素(NO)やオクトパミン(OA)のシグナルが深く関わることも示唆されており、体表物質の情報が脳内でどのように処理され、その中でNOとOAがどのような役割を果たしているのかを探りたい。 攻撃行動の発現とNO、OAシグナルとの関わりを調べるため、闘争行動の前後にNO合成阻害剤やOA拮抗剤を頭部に投与する行動薬理学実験を行った。その結果、闘争行動時におけるNOの合成阻害により敗者の攻撃行動の回復が早まること、OAシグナルの阻害により逆に回復が遅れることが明らかとなった。NOとOAを同時に阻害すると互いの影響が相殺されることから、脳内でNOとOAのシグナルが連携して攻撃行動を制御していることが示唆された。さらに、触角への体表物質の刺激により脳内でNOの放出が起こること、NOシグナルにより脳内のオクトパミン量が変動することが明らかとなっており、体表物質-NO-OAという情報処理経路が存在すると考えられる。現在は、NO誘起性cGMPとOAの2重抗体染色により両者の脳内局在を調査中である。攻撃行動におけるNOの関与は、これまでに脊椎動物を含む多くの動物によって報告されており、コオロギの闘争行動は攻撃行動と闘争経験に基づく行動切替えにおけるNOの役割を解明するモデル系として非常に有用であることが示された。 さらに、共同研究者との協力により、攻撃行動を引き起こすオス個体の体表物質の解析をすすめている。これまでに、体表炭化水素のオレフィン物質のうち攻撃行動や逃避行動に関与する分子を構造決定することができた。これにより、今後の電気生理学実験への応用が期待される。
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Research Products
(11 results)