2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20770058
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Research Institution | Toho University |
Principal Investigator |
成末 憲治 Toho University, 薬学部, 講師 (30432850)
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Keywords | アメフラシ / 軟体動物 / 摂食行動 / 産卵ホルモン / 神経回路 / 可塑性 / 生理学 / 神経生物 |
Research Abstract |
本研究は産卵時における摂食行動抑制に関わる摂食神経回路網とその細胞内メカニズムを解明することを主な目的とした。今年度は軟体動物アメフラシの口球神経節に存在する同定ニューロン (MA, multi- action ; JO, jaw-opening ; JC, jaw-closing) に対して産卵ホルモンであるELH (Egg-laying hormone) の効果を検討した。ELHの添加前後でMA, JO, JCの静止膜電位に変化は見られなかった。次に酷, JO, JCの自発的応答に対するELHの効果を調べたところ、MAの自発的放電期間が比較的短い場合はJO, JCに変化が見られなかったが、MAの放電期間が長い場合はJCに誘発されるスパイク数がELH添加後に増えることがわかった。そこで食道神経を電気的に頻回刺激して、中枢神経回路に擬似摂食応答を誘発させたときのELHの効果を調べた。擬似摂食応答時、ELHの添加前後でMA, JOに誘発されたスパイク数にほとんど変化は見られなかったが、JCのスパイク数はELH添加後に有意に増加した。スパイク数の増加はELH添加2時間後まで見られ、洗浄1時間後でも増加が持続した。さらにJO, JCの発火閾値に対するELHの効果を調べたところ、JOはELH添加後に同一通電量に対して誘発されるスパイク数が減少したのに対して、JCは逆に増加する傾向が見られた。すなわち、JOの発火閾値は上がり、JCの発火閾値は下がった。以上の結果、ELHにより中枢神経回路が修飾され、摂食応答時のJCのスパイク数が増えることが明らかになった。これは開口に比べて閉口時間の増加を意味しており、産卵時の動物個体に見られる摂食量の減少に影響を与えていることが示唆された。
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