2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20770058
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Research Institution | Toho University |
Principal Investigator |
成末 憲治 Toho University, 薬学部, 講師 (30432850)
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Keywords | アメフラシ / 軟体動物 / 摂食行動 / 産卵ホルモン / 神経回路 / 可塑性 / 生理学 / 神経生物 |
Research Abstract |
本研究は、産卵時における摂食行動抑制に関わる摂食神経回路網の可塑的変化を解明することを主な目的とした。昨年度に引き続き、軟体動物アメフラシの口球神経節に存在する閉口運動ニューロン(JC,jaw-closing)にガラス微小電極を刺入して産卵ホルモンであるELH(Egg-laying hormone)の効果を検討した。これまでELH添加によりJCのスパイク数が有意に増加することが明らかになっている。そこで、JCの発火時期の位相関係を詳しく調べるためにDn値(Normalized delay)を定義して解析を行った。Dn値は、JCの脱分極時間に対する発火開始の遅れの割合を正規化したものである。まず、JCの自発的応答に対するELHの効果を調べたところ、ELH添加後にJCのDn値がコントロールに比べて有意に減少した。次に、食道神経を電気頻回刺激して、中枢神経回路に摂食様運動パターンを誘発させたときのELHの効果を調べた。JCのDn値は、ELH添加15分後から2時間後まで有意に減少して、洗浄1時間後でも減少が持続した。Dn値の減少は、摂食様運動パターンにおいてJCの発火開始時期が早くなることを意味している。この運動パターンの変化は、過去の研究より明らかになった吐き出し様運動パターンに類似している。以上の結果、ELHによりJCの運動パターンが修飾され、閉口開始時期が早くなることが明らかになった。これは口の運動パターンが食物を吐き出す方向へシフトすることで産卵時の動物個体に見られる摂食量の減少に関与している可能性が示唆された。なお、ELHにより引き起こされる行動変化がどのような細胞内情報伝達系を用いているかについては、今後も検討を続けていく。
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