2008 Fiscal Year Annual Research Report
ミトコンドリアゲノム全塩基配列決定による紐形動物門の系統分類学
Project/Area Number |
20770061
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
柁原 宏 Hokkaido University, 大学院・理学研究院, 助教 (30360895)
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Keywords | 紐形動物 / 系統 / 分類 / 形態形質 |
Research Abstract |
本研究の目的は紐形動物門の主要分類群間の系統関係について信頼性の高い推定を行って伝統的分類体系を再評価することである。本研究では単針類と呼ばれる分類群に焦点を当て、科レベルの分類体系を再構築する上で有用な形態形質を検証することを目的としている。今年度は研究実施計画で述べたミトコンドリアゲノム解読というストラテジーではなく、以下に述べる2つの代替戦略を採った。1つは、密なタクソンサンプリングが可能な18S rRNA、28S rRNA、およびCOI遺伝子を用いて、細部にわたって形態形質が明らかになっているOTUを解析に加えるものであり、この結果Distromatonemerteaと呼ばれる単針類の一群が、血管系の形態に基づいて2つのタクサ(リンネ式分類体系では上科に相当する)に分類できることが明らかとなった。2つめは、発現シークエンスタグ(EST)解析である。これはスウェーデンのクリスティーネベルク臨海実験所で開催された国際ワークショップで提唱されたプロジェクトであり、現在7カ国10名の研究者が参加している。ワークショップでは解明すべき系統関係として特に紐形動物門の根に近い部分に焦点が当てられ、タクソンサンプリングのストラテジーが話し合われた結果、古紐虫類を中心に24種の「コア・ファイロジェニー」を解明することが採択された。解析はハーバード大学の454次世代シークエンサーで行われる。今年度はこのほか、1995年から2007年にかけて公表された紐形動物の新種と新属を網羅したカタログを作成したほか、国内初記録種のホロタイプならびに日本産標本観察に基づく再記載を公表した。
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