2009 Fiscal Year Annual Research Report
SARSコロナウイルスのウイルス粒子形成に関わる蛋白質複合体の構造生物学的研究
Project/Area Number |
20770075
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
坂井 直樹 Hokkaido University, 大学院・先端生命科学研究院, 助教 (20422008)
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Keywords | SARSコロナウイルス / 構造生物学 / X線結晶構造解析 |
Research Abstract |
SARSコロナウイルス(SARS-CoV)の構造蛋白質の一つであるN蛋白質(NP)は,感染宿主細胞の細胞質中で転写されたウイルスゲノムRNAと結合し,その後に多量体化することでヌクレオキャプシドを形成すると考えられている.これまでに得られた知見により,細胞質で形成されたヌクレオキャプシドが,N蛋白質を介して小胞体膜上に局在するSARS-CoVの構造蛋白質であるM蛋白質と結合することによりウイルス粒子の形成が進むと考えられるがその分子機構は不明である.本研究ではN-M複合体の構造生物学的な解析を行い,この複合体を中心とした,SARS-CoVの粒子形成の仕組みを理解するために,X線結晶構造解析法により,NPとM蛋白質の複合体(N-M複合体)の立体構造を明らかにすることを目的とした.M蛋白質は大腸菌組換え発現系を用いて発現させると,封入体を形成し,単独で可溶性の蛋白質として調製することができなかったことから,NPとの共発現を大腸菌組換え発現系,および小麦胚芽無細胞発現系を用いて行った.昨年度来,この条件の最適化を実施したが,本研究の期間内ではNP-M複合体を調製するには至らなかった.NP-M蛋白質の相互作用はウイルス粒子形成においては非常に重要な相互作用である.多くのエンベロープウイルスにおいて,ヌクレオキャプシド蛋白質とウイルス膜蛋白質の相互作用がウイルス粒子形成のトリガーになっており,ウイルス粒子形成一般においてこの相互作用を明らかにすることは意義深い.今後,コロナウイルス以外のウイルス種由来のウイルス膜蛋白質およびヌクレオキャプシド蛋白質を用いた相互作用解析を行い,ウイルス粒子形成の機構に関する分子構造情報を明らかにしていくことが重要である.
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Research Products
(9 results)