2009 Fiscal Year Annual Research Report
線虫を用いた個体発生とエネルギー恒常性をリンクする鍵因子群の解析
Project/Area Number |
20770097
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
福山 征光 The University of Tokyo, 大学院・薬学系研究科, 助教 (20422389)
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Keywords | 線虫 / C.elegans / AMPK / インスリン / PTEN / Foxo / 個体発生 / 恒常性 |
Research Abstract |
多細胞動物において、栄養状態に応じて個体の成長とエネルギー恒常性を協調的に調節することは生存に必須の生命活動である。近年、個体レベルにおいて発生とエネルギー恒常性を協調的に制御する重要なシグナル伝達経路として、インスリン/IGF経路(以下「IIS経路」)とAMPK (5'-AMP activated protein kinase)経路が注目されるようになった。平成20年度の研究では、表皮で発現しているインスリン/IGF経路の因子であるakt-1が表皮の一部である神経芽細胞の栄養依存的な発生進行を仲介していることを示唆する知見を得た。平成21年度の研究ではその知見を基盤に、表皮で発現している恒常活性化体akt-1が非細胞自律的に筋芽細胞の栄養依存的な発生進行も仲介していることを示唆する結果を得た。また、IIS経路で機能する下流エフェクターの一つである蛋白質複合体TORC1(Target of Rapamycin Complex 1)は、インスリン/IGF刺激以外にもアミノ酸刺激によっても活性化されるが、その「アミノ酸シグナル」を仲介するG蛋白質Ragの線虫ホモログ(raga-1とragc-1)も、表皮による神経芽細胞や筋芽細胞の栄養依存的な発生進行に関わることを示唆する知見を得た。TORC1を活性化する「アミノ酸シグナル」は哺乳動物培養細胞を用いた実験系で、培地のアミノ酸飢餓と再添加によって認めることができるシグナル伝達であるが、そのような極端なアミノ酸濃度の変化が起こらない生体内でのアミノ酸シグナルの生理的意義は依存として未知の部分が多い。その観点から考えると、非細胞自律的な芽細胞の栄養依存的な発生進行の制御というRagの生理機能を見出すことができたのは、本研究の重要な成果と捉えることができる。
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