2009 Fiscal Year Annual Research Report
複合糖質コンドロイチンを介した新しい細胞質分裂制御機構の解明
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20770104
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
水口 惣平 Kumamoto University, 大学院・生命科学研究部, 産学官連携研究員 (50398103)
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Keywords | 糖鎖 / C.elegans / 細胞分裂 |
Research Abstract |
本研究は、モデル生物C.elegansの複合糖質コンドロイチンによる細胞質分裂制御機構の解明を目指している。今回の研究では主にChPGコア蛋白質のcpg-1並びにcpg-2 (cpg ; Chondroitin ProteoGlycan)に焦点をあて解析を行った。cpg-1, cpg-2遺伝子はそれぞれの単独機能阻害ではそれほど重篤な表現型を示さないが、共に機能阻害を行うことで線虫初期胚の細胞質分裂異常を引き起こす。cpg-1,cpg-2の発現解析を行ったところ、共に線虫生殖巣に多く存在していた。更にこれらのChPGは卵形成時細胞質に蓄積され、授精直後小胞輸送により細胞外に放出されることで、卵殻と浸透圧に対する障壁の形成を行うことが明らかとなった。cpg-1,cpg-2それぞれの欠失型変異体と野生型線虫の二次元電気泳動(2D-DIGE法)による蛋白質発現変動比較とnanoLC/MS/MSによる同定を行ったところ、両変異体で卵黄蛋白質vitellogeninの発現が大きく減小していた。抗コンドロイチン抗体を用いた免疫沈降法でも、ChPGと相互作用する分子としてvitellogeninが同定され、コンドロイチンとの関与が強く示唆された。vitellogeninは線虫成体の腸で合成され、特殊な小胞輸送により卵成熟の過程で卵に蓄積される分子である。cpg-1,cpg-2欠失型変異体の詳細な表現型解析を行うと、低い遺伝浸透度ではあるが卵細胞が小さく、また卵母細胞が第一減数分裂で停止せずそのまま有糸分裂を繰り返すemo (EndoMitotic Oocytes)表現型を示すものが観察された。細胞膜表面のChPGが異常になるとvitellogeninの取込みが適切に行われず卵成熟に異常を来す。更にemo表現型から、ChPGコア蛋白質の欠矢により、通常はMSP (Major Sperm Protein,精子由来ホルモン様物質)とそのレセプターへの結合により厳密に制御されている卵母細胞の減数分裂期停止機構が働かなくなる事実が明らかとなった。これらの結果は、細胞表層の複合糖質コンドロイチンが、配偶子形成や細胞分裂のタイミング決定に関与する分子機構を示す新しい知見である。高等動物における糖鎖を介した新規の細胞分裂制御機構の解明や、不妊治療など医療への応用も期待される
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Research Products
(6 results)