Research Abstract |
p97/Cdc48pは,AAA ATPaseドメインを2つ持つAAAファミリータンパク質である。p97ホモログは,細胞内の様々な反応に関っている多機能タンパク質であるが,今回新たに,ミトコンドリアの形態形成にも関与していることが明らかとなった。 出芽酵母のCdc48pについて,N末端側のD1 AAAドメインのATPase活性は細胞の増殖に必須ではないが,C末端側のD2 AAAドメインのATPase活性は細胞の増殖に必須であり,特にその協同性が非常に重要であることを,われわれはすでに明らかにしている。そこで,D1ドメインまたはD2ドメインのATPase活性を失った変異体,またはD2ドメインの協同性を失った変異体を発現する酵母について,その細胞内構造変化を観察した。その結果,D1ドメインのATPase活性を失った変異体では,ほとんどの細胞内構造は正常であるが,cisゴルジ体の形態異常が起こることが分かった。一方,D2ドメインのATPase活性を失った変異体およびその協同性のみを失った変異体では,小胞体およびゴルジ体全体の構造異常が起こった。さらに,D2ドメインのATPase活性を失った変異体ではミトコンドリアの形態異常がやや観察されたが,D2ドメインの協同性を失った変異体ではミトコンドリアの著しい凝集が観察された。これまで,p97/Cdc48pホモログがミトコンドリアの形態や生合成に与える影響は報告されておらず,また,ATPase活性そのものよりもその協同性が特に重要であるということは非常に興味深い。現在,Cdc48pのターゲットとなっているミトコンドリアタンパク質の同定を試みており,Cdc48pによる形態制御機構を明らかにしていきたい。
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