2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20770119
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
柳澤 春明 The University of Tokyo, 大学院・理学系研究科, 特任助教 (70466803)
|
Keywords | 鞭毛・繊毛 / 細胞運動 / 生体分子 / 生物物理 |
Research Abstract |
真核生物鞭毛・繊毛の軸糸は,特徴的な屈曲運動を発生する.モーター蛋白質ダイニンが周辺微小管間に発生する直線的な滑り運動を屈曲運動へと変換する過程には,周辺微小管間に存在する架橋構造が必要であるが,その蛋白質としての実体はこれまで不明であった.最近私はこの架橋構造の構成蛋白質の一つ,p120を初めて同定した. 今年度の研究ではp120が大幅に減少する変異株を単離することに成功した.この変異株では保存された軸糸蛋白質PACRGが変異しており,その鞭毛は野生型と異なる3次元的な屈曲を示した.PACRGが9本のうち特定の周辺微小管上にのみ局在したことから,その変異で減少するp120も特定の周辺微小管間のみを架橋している可能性が高い.円周上に並んだ9本の周辺微小管間の一部が異なる架橋蛋白質で結ばれていることは,9回対称構造を持つ鞭毛・繊毛が特定の方向にのみ屈曲を発生し,方向性を持った細胞運動・物質輸送を実現する上で重要であると考えられる. PACRG変異株でp120が減少しても鞭毛が構築されるため,p120とは別の架橋蛋白質の存在が予想される.この架橋構造が失われると鞭毛が正常に構築できなくなるのではないかと考えて,極めて短い鞭毛しか形成できない変異株5種の解析を行った.いずれの変異株も野生型の1/20程度の長さしか鞭毛を形成できず0周辺微小管間架橋構造の異常を示した.これらの株では,鞭毛・繊毛をもつ生物種で高度に保存されたコイルドコイル蛋白質FAP59, FAPI72が変異していた.生化学的な解析の結果,この2つの蛋白質が周辺微小管に結合しており,架橋構造と同じ条件で抽出されることがわかった.変異によって鞭毛形成が著しく阻害されるような軸糸構造構築に必至な蛋白質が見つかったのは今回が初めてである.
|
Research Products
(1 results)