2008 Fiscal Year Annual Research Report
重水素交換によるアミロイド核依存性伸長反応中間体の構造解析
Project/Area Number |
20770122
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
茶谷 絵理 Ritsumeikan University, 薬学部, 助教 (00432493)
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Keywords | 蛋白質 / フォールディング / ミスフォールディング / アミロイド / 水素-重水素交換 / NMR / 中間体 / 構造 |
Research Abstract |
アミロイド線維は、タンパク質のミスフォールディングによって形成される立体構造であるが、数々の深刻な疾病に関わることから、タンパク質科学分野でもその形成原理が重要な研究課題となっている。アミロイド線維構造は、「核依存性伸長」、すなわち、アミロイド線維の自らの末端構造を鋳型としてモノマー体が付着し、構造を形成し重合してゆくという反応様式に基づいて形成するが、鋳型構造をどのように認識し再現してゆくのかの詳細については、未解明である。そこで、本研究は、透析アミロイドーシスの原因タンパク質であるβ_2ミクログロブリンのアミロイド線維に着目し、核依存性伸長反応中に経由されると考えられる中間体構造を捉え、詳細な構造特性を重水素交換-NMR法で解析することを目的としている。本研究によって、伝播に関わるアミノ酸相互作用の知見を得るとともに、今後、アミロイド線維の中間体構造解析にもちいることのできる新しい手法の確立もねらって研究を進めている。 平成20年度は、簡易的な手混ぜ法をもちいた重水素交換実験を行った。重水中のシードに、軽水中の同位体標識モノマーを小容量添加することによって伸長反応と重水素交換反応を同時に開始した。その後、一定時間放置し、伸長反応過程に起きた構造変化の累積的な情報を記録した。さまざまなシード濃度で解析をおこなった結果、低シード濃度では、モノマーの重水素交換とアミロイド線維の重水素交換の加算的なパターンが得られるいっぽう、高シード濃度では、いわば酵素反応における前定常状態に相当する状態に至り、2状態反応では説明できない重水素交換パターンが現れることが判明した。このことは、速度論的な中間体が一時的に蓄積したことを意味するものであり、本研究により初めて中間体の捕捉に成功した。より詳細な構造特徴を明らかにするために、今後クエンチトフロー標識法をもちいた構造解析をおこなう計画である。
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