2009 Fiscal Year Annual Research Report
重水素交換によるアミロイド核依存性伸長反応中間体の構造解析
Project/Area Number |
20770122
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
茶谷 絵理 Ritsumeikan University, 薬学部, 助教 (00432493)
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Keywords | タンパク質 / フォールディング / ミスフォールディング / アミロイド線維 / 水素-重水素交換 / NMR / 中間体構造 / 蛍光 |
Research Abstract |
アミロイド線維は、「核依存性伸長」、すなわち、自らの末端構造を鋳型としてモノマー体が結合し、構造を形成しながら成長してゆくが、鋳型構造をどのように認識し再現するのかの詳細な機構は未解明である。本研究では、透析アミロイドーシスの原因タンパク質であるβ_2ミクログロブリンの核依存性伸長反応中に経由する中間体構造を捉え特性を明らかにすることを目的として、トリプトファン蛍光および重水素交換-NMRを用いた以下の解析を行った。 まず、トリプトファン残基をすべてフェニルアラニンに置換した無蛍光性の変異体をシードとし、これに少量の野生型タンパク質を添加することによって、これまで困難であった高シード濃度条件での蛍光スペクトル変化の追跡を実現した。なお、本解析に必要なできるだけ小さく末端数の多い高活性シードについては、超音波効果によって効率的に作製できることを分析用超遠心により実証した。 解析の結果、モノマーに対して過剰量のシード存在下では、いわば酵素反応の前定常状態に相当するような速度論的挙動が見られ、過渡的な中間体の蓄積を確認することができた。興味深いことに、線維の末端には、モノマーが1分子ではなく10分子近く同時に結合しているようであり、アミロイド線維形成に関わる新たな構造イメージを捉えたと考えられる。 次に、重水素交換-NMR測定において、重水中のシードに軽水中の同位体標識モノマーを小容量添加することにより、アミロイド線維の伸長反応と競合した重水素交換反応を観察した。その結果、蛍光実験と同様に速度論的中間体を確認することができた。さらに、中間体が蓄積した時点でクエンチトフロー重水素パルス標識を適用することにより、中間体の重水素交換パターンを解析しているが、モノマー構造にかなり近い一方でよりほどけた領域をもつ様子が分かりつつあり、間もなく中間体特有の構造特徴を明らかにできると考えている。
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