2009 Fiscal Year Annual Research Report
メダカ減数分裂細胞を用いたヒト染色体転座誘導機構の解明とその応用
Project/Area Number |
20770141
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Research Institution | Fujita Health University |
Principal Investigator |
稲垣 秀人 Fujita Health University, 総合医科学研究所, 助教 (70308849)
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Keywords | 染色体転座 / DNA二重鎖切断 / DNA高次構造 |
Research Abstract |
ゲノムの不安定性のひとつである染色体転座は従来ランダムに起こるとされてきたが、近年特定の位置で頻発する転座が取り上げられてきている。代表者らは以前の研究から、DNAの特定の領域が十字架型の高次構造を形成することで、DNAの二重鎖切断を誘発するという説を提唱した。その発生機構を明らかにする目的で、メダカおよびヒトでのモデル系を用いた解析を試みた。まず、減数分裂をin vitroで誘導可能で、また変温動物であるために、さまざまな温度条件で実験可能なメダカを用いて転座を誘導する系を立ち上げることを試みた。転座を起こす条件として、ヒトでは精子形成時にのみ発生することが明らかにされている。その理由として精子形成時のクロマチン脱落が関係していることが推測された。そのためマーカー遺伝子の発現により周辺のクロマチン構造に影響を与えることが想定されたため、当初の計画を変更した構築を用いてトランスジェニックを作成した。しかしながらヒトの転座頻度に達するような条件を得ることができなかった。また後述する、すでに完成し発表しているヒトの培養細胞での転座モデル系の手法をメダカの細胞で試したが、やはり転座を検出できなかった。原因として、転座頻度が検出限界以下であることが推測された。検出を成功させるには、頻度を上昇させるような構築を用いることが必要であると考えられた。一方転座の発生機構をヒトで解明する目的で平行しておこなった、ヒト培養細胞の転座モデル系による解析では、関与する因子としてDNA組換えのGEN1が候補として同定された。この酵素は発見されて間もない新規のタンパク質で、生体内での役割がはっきりとは明らかにされていない。DNA修復機構が間違って染色体を切断する理由は不明だが、染色体転座に関与するという興味深い知見を得ることができた。この成果は本年度の学会で発表した。また論文としてまとめる予定である。
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