2010 Fiscal Year Annual Research Report
受精時に精子から受精卵に伝達される転写産物の同定と機能解析
Project/Area Number |
20770145
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
川野 光興 独立行政法人理化学研究所, LSA要素技術開発ユニット, 研究員 (00455338)
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Keywords | 精子 / 小分子RNA / 機能性RNA / 生殖細胞 / 次世代シーケンサー / 核移行シグナル / エピジェネティクス / 世代伝達性物質 |
Research Abstract |
本研究では、マウス精巣と精子中に存在する小分子RNAの網羅的同定を塩基配列決定により行った。これらのデータは、RNAが遺伝物質であるという仮説の上に立った候補RNAを探索する基礎データになりうる。これらのデータから、新規の機能性小分子RNA分子を探索した。さらに、受精時に精子から受精卵に伝達される転写産物を同定し、その転写産物の機能を解析することを目的とした。本年度は、次世代シークエンサーを用いた解析により発見した、マウス精子において特異的に存在する小分子RNAの機能解析をさらに進めた。この研究で発見した2つの小分子RNAは約20塩基からなり、全体に渡って相同性が高く、5'末端から9塩基目までは完全に配列が一致していた。それらはpiRNAクラスター内にコードされており、その周辺の転写の状況からpiRNA前駆体RNA由来の小分子RNAと推測された。これら小分子RNAの末端に蛍光標識を連結して、マイクロインジェクションによりマウス受精卵の雄性前核に導入し、初期発生における細胞内局在の観察を行った。その結果、これら小分子RNAは胚盤胞期まで核に安定に局在することがわかった。さらに、変異型のRNAを作製し同様の実験を行ったところ、核局在に寄与する8塩基からなるモチーフ配列を見いだした。これら小分子RNAに特異的に結合するタンパク質の同定を共免疫沈降法によって試みたところ、RNA結合タンパク質を含む複数のタンパク質が結合しうることが示唆された。この精子特異的小分子RNAが、受精の際に精子から卵子へ伝達されるのかqPCR法によって調べたところ、未受精卵においては検出されなかったが、受精卵において約10コピーの小分子RNAが検出された。精子特異的小分子RNAが高発現するトランスジェニックマウスを作成したところ、コントロールと比べて有意に成長の遅い小型マウスが現れた。
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