2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20770157
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
森田 強 Osaka University, 医学系研究科, 助教 (80403195)
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Keywords | 癌 / 細胞骨格 / 細胞運動 / 転移 |
Research Abstract |
本研究課題は、転写因子MRTFのがん悪性化過程における関与を検討することが目的である。これまで私は、MRTFが様々なアクチン細胞骨格関連遺伝子の発現を誘導することで細胞の形態や運動能を制御していることを報告してきた。さらに、がん細胞の遊走能獲得において重要な事象である上皮間葉転換においてもMRTFが密接に関与していることを明らかにしている。本年度は、まず様々ながん細胞株や形質転換体においてMRTFの発現量や活性変化の有無を検討した。その結果、v-Rasやc-Srcにより形質転換された細胞においてMRTFの核への局在化が著しく抑制されており、そのためMRTFの活性が減少していることが明らかとなった。それに伴い、カルデスモンやトロポミオシンなどのアクチン結合タンパク質の発現が著減していた。一方、これらの細胞に活性化型MRTFを導入するとこれらアクチン結合タンパク質の発現量が回復し、形態も正常細胞に近いものへと変化した。これら遺伝子導入された細胞では、細胞の浸潤能や足場非依存的な増殖能などのがん細胞特有な形質が抑制されていた。このように、MRTFの活性は細胞のがん形質に密接な関わりがあることが明らかとなった。さらに、MRTFファミリータンパク質で特に平滑筋や心筋において発現量の多いmyocardinに関しても、様々な平滑筋肉腫においてその発現が著減していることが明らかとなった。以上のように、MRTFはアクチン細胞骨格関連遺伝子の発現制御を介してがん細胞の悪性化過程に関与しており、MRTFを活性化することでがんの悪性化や転移を抑制できる可能性が示された。これに関して、MRTFにより発現制御されている代表的なタンパク質であるカルデスモンが、ステロイドホルモンの一種であるグルココルチコイドによっても発現誘導され、それにより肺がん細胞株であるA549細胞の遊走能を抑制できることも見出し報告した。
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Research Products
(3 results)