2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20770164
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
荒井 律子 National Institute of Genetics, 新分野創造センター, 特任研究員 (10342742)
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Keywords | 微小管 / 核-細胞質間輸送 / レプトマイシンB / Crm1 / importin |
Research Abstract |
本研究は、核-細胞質間輸送の関連性という独創的な側面から微小管制御機構を明らかにすることを目的とした。これまでに、核外輸送担体Crmlの阻害剤であるレプトマイシンB(LMB)で処理した分裂酵母細胞では、間期の細胞質微小管が消失し、核内微小管が形成されることを示してきたが、本年度の研究から、さらに以下の新事実を得ることができた。まず、LMB処理時におけるいくつかの微小管結合タンパク質(MAPs)の局在変化について解析を行った結果、間期の細胞質微小管および分裂期の紡錘体の両者の形成に関わるMAPsはLMB処理後に形成される核内微小管上に局在化するが、細胞質微小管に特異的なMAPsは核外に留まることが分かった。このことから、核膜崩壊を伴わない有糸分裂(closed mitosis)を行う分裂酵母細胞では、紡錘体形成に関わるMAPsおよびチューブリンが、細胞周期の切り替わりに応じて核内外の適切な方向へと分配されるように調節されていると考えられた。また、間期および核分裂後にはチューブリンの核外輸送および間期細胞質微小管の形成中心(iMTOCs)の機能が協調して働き、細胞質微小管の形成伸長が効率的に行われている可能性を導き出すことにも成功した。さらに、チューブリンの核内移行には、核内輸送担体importin-αが関与していることが分かった。以上のことから、分裂酵母の微小管ネットワーク形成機構において、核一細胞質問輸送が中心的な役割を果たしていることが明らかになった。生命体諸活動において欠くことのできない微小管の動的構造変化の制御機構を解明しようとする研究は、基礎生命科学分野の進展において大変意義深いものとして位置づけられる。本研究によって得られた成果は同進展に大きく貢献するものと思われる。今後学術誌上および学会において広く公表する予定である。
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