2009 Fiscal Year Annual Research Report
新規解析系を用いた核-細胞質間タンパク質輸送経路同定と制御機構解析
Project/Area Number |
20770166
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
小瀬 真吾 The Institute of Physical and Chemical Research, 今本細胞核機能研究室, 専任研究員 (90333278)
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Keywords | 核内移行 / 分子シャペロン / importin / 熱ショック |
Research Abstract |
核-細胞質問の能動的タンパク質輸送の大部分は、運搬体分子群Importinβファミリーによって担われる。しかし、熱ショック応答時には、塩基性核局在化シグナル(NLS)に依存する輸送経路など正常時のタンパク質の核内移行が強く阻害されることが近年明らかになった。しかし一方で、分子シャペロンHsc70などは、熱ショックに応答し、細胞質から核に、その局在を速やかに変化させる。このHsc70核内移行の分子メカニズムはほとんど明らかになっていない。本研究では、熱ショック応答時におけるHsc70核内移行を解析するin vitro系を構築し、Hsc70の核内輸送機構の解析を行ってきた。 熱ショック処理をしたHeLa細胞から細胞抽出液を調整し、Hsc70の核内移行を促進する活性を指標に、機能タンパク質の分離精製を行った。その結果、Importin βファミリーに属さない機能未知なタンパク質を同定した。この分子は、酵母から人まで非常に高い相同性をもち、進化的に保存されている。しかし、どの生物種においても機能は不明であった。セミインタクト細胞での輸送系や培養細胞でのRNAi実験等から、この分子は、熱ショック時のHsc70/Hsp70の核内移行に必須であることがわかった。また、この分子は、運搬体分子の特徴である核膜孔通過活性をもつことがわかった。これらの結果は、この分子が、熱ショック応答時におけるHsc70/Hsp70の核内移行の運搬体分子であることを強く示唆している。本研究によって、熱ショック時に機能する核-細胞質問タンパク質輸送経路の同定に初めて成功した。細胞には恒常性を維持するため様々な防御機構が備わっている。本研究における核-細胞質問分子流通の制御もまた、それらの防御機構の一環と考えられ、今後のストレス応答研究等に重要な示唆を与える結果である。
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