2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20770174
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
越田 澄人 The University of Tokyo, 大学院・理学系研究科, 准教授 (40342638)
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Keywords | 発現制御 / 発生・分化 / 遺伝学 / 遺伝子 / シグナル伝達 |
Research Abstract |
細胞は、環境からのシグナルを受け取ってゲノムに保存された遺伝子情報を選別し、発現制御することで様々な機能を果たしている。発現制御は、シグナルの種類だけではなく、それを受け取る細胞の「応答性」にも依存している。従って遺伝情報の読み出し制御機構を理解する上では、細胞の応答性を司る分子機構を明らかにすることが極めて重要であるが、未だ不明である。本研究では、遺伝情報の読み出し制御に関与する分子機構の解明を目的としている。 脊椎動物初期胚の中胚葉特異的遺伝子発現の応答性に、クロマチンの高次構造が関与している可能性を検討するために、クロマチン構造に影響を及ぼすピストンのアセチル化状態を改変する実験を行った。ヒストン脱アセチル化を阻害するTrichostatin A (TSA)で処理された胚では、中胚葉特異的遺伝子nt1の発現が後期原腸胚の胚盤周縁部で拡大し、また本来発現しない脊索前板で弱い発現が観察された。これらのことは、ピストンの脱アセチル化によるクロマチン構造の変化が寵1遺伝子の転写を抑制することが、正常な発現パターンの実現に必須であることを示唆している。一方で、nt1と同様に胚盤周縁部で発現するfgf8やwnt8では、発現領域の拡大はみられなかったことから、アセチル化状態による発現領域制御には遺伝子選択性がみられることも明らかとなった。今後、舵1遺伝子をコードするゲノム領域でピストンの脱アセチル化を引き起こす分子機構の解明を行っていく。
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