2008 Fiscal Year Annual Research Report
始原生殖細胞によるゲノム修飾の再構成と全能性の再確立
Project/Area Number |
20770186
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
関 由行 The Institute of Physical and Chemical Research, 哺乳類生殖細胞研究チーム, 基礎科学特別研究員 (20435655)
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Keywords | 分化全能性 / 生殖細胞 / エピゲノム |
Research Abstract |
生殖細胞は次世代の個体発生を保証することで, 生命の連続性を維持し, かつ生物の多様性及び進化を産み出すことができる唯一の細胞である. しかしながら, 生殖細胞がどのような分子機構を駆使して分化全能性を獲得するのかについては未だ不明な点が多い. 私は, 精子・卵子の起源である始原生殖細胞における後生的遺伝子修飾(エピゲノム)動態を解析により, 生殖細胞特異的なエビゲノム変動(DNA, H3K9me2の脱メチル化及びH3K27me3の高メチル化)が誘導されることを明らかにしてきた. このような現象は, 生殖細胞による分化全能性獲得機構を潜在的に保証する可能性を秘めている. そこで, 始原生殖細胞特異的なヒストンメチル化変化を制御する分子基盤を同定するために, ヒストンメチル化酵素の機能ドメインであるPR/SETドメインを指標とした発現スクリーニングを行った. その結果, 始原生殖細胞特異的に発現する機能未知の分子Prdm14を同定することに成功した. 次に, Prdm14遺伝子の機能解析を行うためにPrdm14ノックアウトマウスを作製した. Prdm14ノックアウトマウスは外見上全く正常であったが, 始原生殖細胞の分化不全が原因で雌雄ともに完全に不妊であった. Prdml14を欠損した始原生殖細胞は, エピゲノム再編成が誘導される時期において数は減少していたものの, その存在が確認されたため, Prdm14欠損始原生殖細胞におけるエピゲノム変化解析を行った. その結果, Prdm14を欠損した始原生殖細胞では, エピゲノム再編成が破綻していることが分かり, Prdm14遺伝子が始原生殖細胞によるエビゲノム再編成を制御する分子基盤の上流に存在する可能性が示唆された. また, 始原生殖細胞は特定の培養条件下で培養することで, 多能性幹細胞であるEG細胞を形成することができる. 非常に興味深いことに, Prdm14欠損始原生殖細胞はEG細胞形成能を消失していたことから, Prdm14は潜在的多能性の再獲得に必須である初めての遺伝子であることが明らかとなった.
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Research Products
(3 results)