2008 Fiscal Year Annual Research Report
恒温動物の体温調節機構の進化:温度感覚と非震え熱産生機構に関る遺伝子の比較解析
Project/Area Number |
20770191
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
齋藤 茂 Iwate University, COE研究員 (50422069)
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Keywords | 温度環境適応 / 非震え熱産生 / 温度受容体 / TRPV3 / β3アドレナリン受容体 / 脱共役タンパク質1(UCP1) / 脊椎動物 : ニシツメガエル / 分子進化学 |
Research Abstract |
恒温動物の温度環境適応に寄与した遺伝的な変化を解明するために下記の研究を行った。 1、「非震え熱産生機構に関与する遺伝子の脊椎動物における進化過程の解明」 (1) 非震え熱産生機構の寒冷シグナル伝達に関与するβ3アドレナリン受容体遺伝子をゲノム配列データベースから収集し比較解析を行った。β3アドレナリン受容体遺伝子は脊椎動物の祖先種には既に存在し、哺乳類の出現よりずっと古い時期に生じたことが示された。また、アミノ酸置換の進化速度が哺乳類の祖先種において加速したことからこの時期に機能的な制約が変化した可能性が示された。 (2) 有胎盤哺乳類の非震え熱産生では脱共役タンパク質1(UCP1)は発熱において中心的な役割を果たし、褐色脂肪にのみ発現する。一方、変温動物のコイ(魚類)では肝臓および脳で転写される。本年度は、両生類であるニシツメガエルめUCP1が転写される組織を調べ、胃腸、腎臓、脳、卵巣、精巣で転写されることを明らかにした。変温動物種間でもUCP1が機能する組織の種類が異なることが示された。 2、「有胎盤哺乳類のUCP1遺伝子の進化速度の比較」 様々な有胎盤哺乳類のUCP1遺伝子を比較したところ、イヌに至る系統で多数のアミノ酸置換が生じ、機能的な制約が変化した可能性が示された。 3、「哺乳類において暖かい温度受容体であるTRPV3遺伝子の陸上脊椎動物における進化過程の解明」 ニシツメガエルおよびニホンアマガエルのTRPV3遺伝子のcDNA配列を決定し、アミノ酸配列を様々な脊椎動物種間で比較した。TRPV3のアミノ酸配列は哺乳類、グリーシアノール(爬虫類)、ニワトリ(鳥類)の間では類似していたが、一方、ニシツメガエル、アマガエルではC末端領域が著しく異なっていた。また、ニホンアマガエルとニシツメガエルの間でもTRPV3のC末端領域は異なっており、両生類系統において多様化した可能性がある。
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