2010 Fiscal Year Annual Research Report
恒温動物の体温調節機構の進化:温度感覚と非震え熱産生機構に関る遺伝子の比較解析
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20770191
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
齋藤 茂 大学共同利用機関法人自然科学研究機構(共通施設), 岡崎統合バイオサイエンスセンター, 特別協力研究員 (50422069)
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Keywords | 温度受容体 / TRPV3 / ニシツメガエルXenopus tropicalis / 非震え熱産生 / 脱共役タンパク質1(UCP1) / タヌキ / 分子進化学 / 電気生理学 |
Research Abstract |
恒温動物の温度環境適応に寄与した遺伝的な変化を解明するために下記の研究を行った。 1.有胎盤哺乳類の非震え熱産生に中心的な役割を果たす脱共役タンパク質1(UCP1)は両生類であるニシツメガエルでは胃腸、腎臓、脳、卵巣、精巣で転写されることを昨年度までの研究で明らかにした。本年度はニシツメガエルのUCP1遺伝子の発現量が飼育温度により変化するかどうかを検討するため、適温(27℃)および低温(20℃)条件下でUCP1 mRNA量が変化するかどうかを上記の組織で調べた。その結果、UCP1のmRNA量が脳において低温条件下で上昇することが分かった。 2.UCP1遺伝子の進化速度がイヌ科に属するイヌおよびタヌキの共通祖先で加速し、特異的なアミノ酸置換が多数生じたことを昨年度までの研究で見出した。本年度は進化速度が加速した時期をより正確に推定するためにクマ科のジャイアントパンダのUCP1遺伝子の塩基配列を比較に加えた。ジャイアントパンダUCP1はイヌ科に特有なアミノ酸置換を共有しておらず、進化速度の上昇はイヌ科で生じたことが分かった。 3.昨年度までの研究により両生類であるニシツメガエルTRPV3チャネルは温度および化学物質感受性が哺乳類のものと異なることを明らかにし、陸上脊椎動物の進化過程でTRPV3チャネル特性が変化してきたことを見出した。TRPV3チャネルの機能的な進化過程をより詳細に調べるために、本年度は爬虫類であるグリーンアノールトカゲのTRPV3チャネルをクローニングし、その特性を検討した。マウスTRPV3はユーカリ由来の化学物質であるユーカリプトールによって活性化されるが、一方、ニシツメガエルTRPV3は活性化されない。グリーンアノールトカゲのTRPV3にユーカリプトールを作用させたところ、活性化されたことからマウスと類似した化学物質感受性を持つことが分かった。
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