2008 Fiscal Year Annual Research Report
全ゲノム配列を用いた嗅覚および他の化学受容体遺伝子ファミリーの比較進化解析
Project/Area Number |
20770192
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
新村 芳人 Tokyo Medical and Dental University, 難治疾患研究所, 准教授 (90396979)
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Keywords | 嗅覚受容体 / 化学受容 / 多重遺伝子族 / 比較ゲノム / 分子進化 / 脊椎動物 / 霊長類 / バイオインフォマティクス |
Research Abstract |
今年度は以下の研究を行った。 1. 霊長類の進化過程における嗅覚の変化を知るために、マカクザル・チンパンジー・ヒトのゲノム配列から全嗅覚受容体(OR)遺伝子を決定し、詳細な分子進化解析を行った。その結果、従来言われていた説とは異なり、ヒト・チンパンジー間でOR機能遺伝子数、偽遺伝子の比率、偽遺伝子化の速度にはほとんど差がないことを明らかにした。一方、ヒト・チンパンジー間でオーソロガスな機能遺伝子は約75%しか存在せず、両者のOR遺伝子レパートリーは大きく異なっていることも明らかにした。本研究は京都大学霊長類研究所の郷康広博士と共に行い、その結果は国際誌Molecular Biology and Evolutionに掲載された。 2. 脊椎動物OR遺伝子ファミリーの起源と初期進化を知るために、ナメクジウオ・ホヤ・ヤツメウナギ・ギンザメ・5種の硬骨魚・カエル・トカゲ・ニワトリの全ゲノム配列からOR遺伝子を同定し、分子進化解析を行った。その結果、以下のことを明らかにした。(1) ナメクジウオは嗅覚器をもたないが、脊椎動物型のOR遺伝子をもつ。従って、OR遺伝子ファミリーの起源は脊索動物の共通祖先にまで遡る。(2) 尾索動物(ホヤ)の系統ではOR遺伝子は失われた。(3) 系統樹上でOR遺伝子に含まれるいくつかのグループは、実際には嗅覚受容体ではない。(4) 水棲の脊椎動物と陸棲の脊椎動物ではOR遺伝子レパートリーが大きく異なる。(5) 少数のOR遺伝子のグループは、水棲・陸棲の脊椎動物両方に存在する。以上の結果は、国際誌Genome Biology and Evolutionに掲載予定である。 以上の研究成果は、国内外の学会やシンポジウムで発表した。また、ペンシルバニア州立大学の根井正利教授、野澤昌史博士とともに、国際誌Nature Reviews Geneticsに化学受容体遺伝子の進化に関するレビューを執筆した。
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Research Products
(17 results)