2009 Fiscal Year Annual Research Report
全ゲノム配列を用いた嗅覚および他の化学受容体遺伝子ファミリーの比較進化解析
Project/Area Number |
20770192
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
新村 芳人 Tokyo Medical and Dental University, 難治疾患研究所, 准教授 (90396979)
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Keywords | 嗅覚受容体 / 化学受容 / 多重遺伝子族 / 比較ゲノム / 分子進化 / 脊椎動物 / 霊長類 / バイオインフォマティクス |
Research Abstract |
霊長目の進化過程で、三色色覚の発達に伴って嗅覚の重要性が低下し、嗅覚受容体(OR)遺伝子が失われたとする仮説がある。霊長目における嗅覚の進化過程とヒト嗅覚の特異性を理解するために、オランウータンおよび完全な三色色覚をもたないマーモセットの全ゲノム配列からOR遺伝子を同定し、ヒト、チンパンジー、アカゲザルの遺伝子と共に比較解析を行った。その結果、マーモセットの機能遺伝子数はヒトやチンパンジーとほとんど同じで、アカゲザルやオランウータンはそれより少ないことが分かった。また、5種間の相同遺伝子を用いた解析の結果、狭鼻猿類の各系統で機能遺伝子は徐々に失われており、三色色覚の獲得によりOR遺伝子が急激に減少したことはないことが示された。5種の共通祖先がもっていたOR遺伝子は、オランウータン、アカゲザルで他の3種よりも大きく失われていた。更に、ヒトのOR遺伝子レパートリーは、進化的に近縁なオランウータン、アカゲザルよりもむしろマーモセットに類似していた。これらのことから、ヒトの嗅覚は、他の霊長目と比べてそれほど退化していないことが示唆された。この研究結果は、国際誌Molecular Biology and Evolutionに採択された。 上の結果および、今年度Genome Biology and Evolution誌に発表された脊索動物のOR遺伝子ファミリーの起源に関する研究について、国内外の多数の学会・研究会で発表した。また、国際誌・国内誌に、OR遺伝子の進化について多数のレビューを執筆した。
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Research Products
(22 results)