2010 Fiscal Year Annual Research Report
全ゲノム配列を用いた嗅覚および他の化学受容体遺伝子ファミリーの比較進化解析
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20770192
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
新村 芳人 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 准教授 (90396979)
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Keywords | 嗅覚受容体 / 化学受容 / 多重遺伝子族 / 比較ゲノム / 分子進化 / 脊椎動物 / 霊長類 / バイオインフォマティクス |
Research Abstract |
1.霊長目の中で、狭鼻猿類のみが三色色覚を有することから、三色色覚の獲得に伴って嗅覚の重要性が低下し、嗅覚受容体(OR)遺伝子が失われたとする仮説がある。この仮説を検証するため、完全な三色色覚をもつ狭鼻猿類(ヒト・チンパンジー・オランウータン・アカゲザル)と、そうでない新世界猿(マーモセット)のOR遺伝子を決定し、それらを比較した。その結果、上の仮説に反して、マーモセットの機能遺伝子数はヒトやチンパンジーとほぼ同じであった。また、5種間の相同遺伝子を用いた解析の結果、狭鼻猿類の系統樹の各枝でOR機能遺伝子は徐々に失われており、上の仮説は支持されないことを示した。この結果はMolecular Biology and Evolution誌に掲載された。 2.哺乳類におけるOR遺伝子ファミリーの多様性を明らかにするために、38種の哺乳類の全ゲノム配列から網羅的にOR遺伝子を同定した。その中にはカバレージの低い(<2x)ゲノム配列も含まれるため、TraceArchiveデータベースを用いて、低精度ゲノム配列から全OR遺伝子数を推定する手法を確立した。 3.マラリア病原虫の蛋白質間相互作用ネットワーク(PIN)と酵母・線虫・ハエ・ヒトのPINとでは、大域的な構造が異なる。この差異は、相互作用するタンパク質数によって遺伝子の重複率が異なるというネットワーク進化モデルによって説明できることを示し、実際のデータがそのモデルに合致していることを見いだした。この結果はBMC Evolutionary Biology誌に掲載され、30日間で最も多くアクセスされた論文となった。 以上の成果は、国内学会・国際学会で発表するとともに、いくつかの著書を執筆した。また、色覚と嗅覚の進化に関しての一般向けのポピュラー・サイエンス書を執筆中である。
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Research Products
(18 results)