2010 Fiscal Year Annual Research Report
ヒトおよびチンパンジーにおける攻撃性と葛藤解決行動
Project/Area Number |
20770199
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
松阪 崇久 関西大学, 人間健康学部, 助教 (90444992)
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Keywords | 行動学 / 進化 / 攻撃性 / 感情 / 発達 |
Research Abstract |
平成22年度には、野生チンパンジーの未成熟個体のストレスについて、糞中コルチゾールを用いた定量的分析をすすめた。性差や発達変化について検討したところ、性や年齢による影響以上にコルチゾール値に大きい個体差があることと、月間変化が見られることが明らかになった。気候の影響が考えられたが、月間変化との対応は見られなかった。この手法で野生動物のストレス評価をおこなう際には、個体ごとの規定値などにも注意しながら慎重に分析する必要がある。これらの結果を動物行動学会にて発表した。観光客数がチンパンジーのストレス状態に影響する可能性もあるため、現在さらに分析を進めている。 野生チンパンジーの行動を網羅的に記述した行動辞典(英文/映像DVD付き)を出版した。 その中で様々な攻撃的行動についても細かく分類し、詳述した。攻撃的行動のレパートリーの多くはチンパンジーに普遍的なものであるが、マハレのチンパンジーに特有と考えられるものもいくつか見られた。チンパンジーの攻撃行動を引き起こす社会的条件の分析だけでなく、文化的な側面も考える必要がある。 過年度に収集した、霊長類研究所の飼育チンパンジーの音声コミュニケーションについてのデータの分析をすすめた。集団の他のメンバーから離れている場合にも集団の音声に関心を示すこと、とくに悲鳴をともなう闘争の音声に対する反応が大きく、集団の社会的葛藤の状況をモニターしていることがわかった。現在、この結果について論文を執筆中である。 この他に、初年度に収集した保育園のヒト幼児の攻撃的交渉に関するデータ分析も進めているが、チンパンジーのデータ分析を優先したため作業が遅れている。また、チンパンジーの生活環境と遊びやストレスの関係についての論考を執筆し、本の一章として出版した。さらに、野生チンパンジーの迷子と母親の葛藤をともなう社会交渉について分析し、現在論文を執筆中である。
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