2010 Fiscal Year Annual Research Report
節水と多収を高度に両立させるイネ畑栽培技術の開発と根系の役割に関する研究
Project/Area Number |
20780010
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
加藤 洋一郎 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 助教 (50463881)
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Keywords | イネ / 節水栽培 / 根系 |
Research Abstract |
逼迫する水需要に対して、節水灌漑稲作技術の開発が世界中で進められている。特に、高生産性陸稲栽培システムでは水資源の大幅な節約と多収穫の両立が期待できる。本研究(平成22年度)では、畑条件下の多収性品種の根系生長、水吸収能力および植物体水分状態を評価し、高生産性陸稲栽培システムにおいて収量安定性に寄与する生長特性を水分利用の面から明らかにすることを目的とした。この目的のため、フィールド試験ならびにポット試験を東京大学大学院農学生命科学研究科附属生態調和農学機構(東京都・西東京市)において平成22年夏季に行った。フィールド試験・ポット試験の両試験において、湿潤・弱乾燥畑条件のいずれでも根長密度は湛水条件よりも顕著に低下したが、これは冠根数減少および側根生長抑制によるものであった。この結果、湿潤畑条件においても多収性イネは植物体の水通導性の低下が示唆された。この水通導性の低下は、気孔コンダクタンスの低下ではなく葉身水ポテンシャルの低下を招いた。一方で弱乾燥畑条件では、深さ20cmの土壌水分が-20kPa以下になると気孔コンダクタンスの低下が顕著となった。以上の結果から、土壌乾燥以外に無代かき・不飽和土壌条件に対する発根や側根発育の抑制機構が存在することが示唆された。このような応答は、総根長密度、植物の水通導性と植物水分状態の低下を招くため、高生産性陸稲栽培システムにおいて多収性イネの生育が不安定となる要因の1つである可能性が推察された。
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