2009 Fiscal Year Annual Research Report
イネ糊粉層とデンプン性胚乳における貯蔵物質蓄積の分子機構解明に関する研究
Project/Area Number |
20780013
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Research Institution | National Agricultural Research Organization |
Principal Investigator |
石丸 努 National Agricultural Research Organization, 作物研究所稲収量性研究チーム, 任期付研究員 (40414635)
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Keywords | イネ / エネルギー供給 / 脂質合成 / デンプン蓄積 / レーザーマイクロダイセクション |
Research Abstract |
胚乳は各部位によって、それぞれ異なる貯蔵物質を蓄積する。申請者は平成20年度までに、水稲品種「コシヒカリ」の開花後7日と12日の胚乳(糊粉層とデンプン性胚乳中心部)をレーザーマイクロダイセクションにより単離し、44Kマイクロアレイや定量PCRなどの遺伝子発現解析手法により、糊粉層におけるペントースリン酸経路の存在や、デンプン性胚乳におけるデンプン合成系酵素の遺伝子群を明らかにした。平成21年度は、44Kマイクロアレイ解析から新規に発見した糊粉層あるいはデンプン性胚乳中心部特異的な代謝経路やタンパク質の遺伝子群の発現解析を行った。 糊粉層では、ペントースリン酸経路以外に、クエン酸回路の遺伝子群が強く発現していた。このことは糊粉層では好気呼吸によってエネルギーを獲得していることを示していたため、酸素電極法により、胚乳各部位の溶存酸素濃度を測定したところ、糊粉層では3-6%の酸素が存在し、デンプン性胚乳では酸素濃度は0%であった。デンプン性胚乳で特異的に発現しているアルコール脱水素酵素も存在したことから、デンプン性胚乳では糊粉層と違って、嫌気呼吸によるエネルギー獲得が示唆された。またデンプン性胚乳では、アミロプラズト膜での局在が示唆されているTocタンパク質、outerenvelope protein (OEP), inner envelope protein (IEP)などが存在し、胚乳でのアミロプラストの分裂や増殖に対して、重要な役割を果たしていることが示唆された。 以上の結果により、胚乳各部位におけるエネルギー獲得の違いや胚乳に多量に存在するアミロプラストの形成に関して重要な役割を果たし遺伝子群が明らかとなった。
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