2010 Fiscal Year Annual Research Report
ポジトロンイメージング技術を用いた果実への光合成産物蓄積機構の解明
Project/Area Number |
20780025
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Research Institution | National Agricultural Research Organization |
Principal Investigator |
菊地 郁 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 野菜茶業研究所・野菜ゲノム研究チーム, 主任研究員 (30360530)
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Keywords | 果実 / 光合成産物 / ナス / 非破壊 / ポジトロン |
Research Abstract |
ポジトロン放出トレーサーの二次元分布を非破壊かつ経時的に解析できるPositron-emitting tracer imaging system(PETIS)を用い、環境の変動がナス果実における光合成産物の蓄積に及ぼす影響を解析した。第2果を結実させたナスを48時間、28℃の連続照明下で維持した後に5Mbqの^11CO_2を果実の下2枚目の葉に施与し、施与葉をPETISで2時間計測した。その後再び100MBqの^<11>CO_2を同じ葉に施与し、同様に果実を3時間計測した。その後、同一の個体を36時間、18℃・連続暗黒下に維持し、明処理後と同様に^<11>CO_2を施与して葉と果実の計測を行った。これにより、長時間明期で維持した後と明期開始直後で固定される光合成産物の動態の相違について検討した。取得したPETIS画像から^<11>C放射活性を抽出し、各組織における動態について解析を行ったところ、^<11>Cが葉に取り込まれてからから葉柄に到達するまでの時間は明処理後の方が暗処理後よりも早い事が示された。また^<11>Cが葉柄から送り出される時間と速度も明処理後の方が速い事が明らかとなった。また果実における^<11>C放射活性の経時的変化から、^<11>Cが果実へ到達する時間は明処理後の方が暗処理後よりも早く、^<11>Cの移行量も明処理後のほうが暗処理後よりも高かった。以上の結果から、明期の長さは葉からの光合成産物の送り出し量や移行速度に影響し、果実への光合成産物の流入量や速度を大きく変化させていると考えられる。光合成産物の移行は明期開始直後よりも、十分に明期に置いた後のほうが活発に行われていた事から、朝より夕方の転流量の方が多い事が推察される。1日に起こる光合成産物の動態変化を把握することは栽培管理を効果的に行い、果実生産性を上げるためにも重要であることから今後さらに詳細な解析を行う必要があると考えられる。
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